“複雑すぎる行先案内” 名鉄名古屋駅のDJブースに潜入 駅員の生実況は”謎の小部屋”で 「日本一迷う駅」支えるアナウンス【チャント!密着】

名古屋市中村区にある「名鉄名古屋駅」。ひっきりなしに電車が入ってくるホームの少し高いところには、謎の小部屋があることを知っていましたか?ここでは、電車の発着案内が自動音声ではなく、全て駅員による実況アナウンスで行われています。2分おきに次々と電車が来る名鉄電車の運行全体を支える、その名も「DJブース」で働く職員の1日に密着しました。
“複雑すぎる行先案内” 名鉄名古屋駅のDJブースに潜入 駅員…の画像はこちら >>
「電車に乗るのが日本一難しい」と「名駅」ならぬ迷う駅、「迷駅(めいえき)」と呼ばれる事もある名古屋鉄道の名鉄名古屋駅。利用し慣れている人でも、迷うことがあるほどです。
難しいと言われる理由は、駅の構造。名鉄名古屋駅を通る路線は上りが豊橋、知多半田、下りが岐阜、弥冨、犬山方面など11路線もありますが、線路は上り下りそれぞれ1本だけ。さらにそれぞれに「普通」や「急行」など、実に29通りもの行き先にわかれています。それぞれ乗車場所も違い、色分けこそしてありますが、そもそも色分け自体が分かりにくいという声も。
電車によって車両数が違い、ホームの停止位置も違うので間違って慌てる乗客もいます。一日およそ900本も発着する、行き先や種類の違う電車を全て捌くのが、謎の小部屋、“DJブース”です。
(名鉄名古屋駅・吉泉洋 駅長補佐)「乗り換え案内などをしている。それをしないと電車が発車できない」
名鉄名古屋駅の駅長補佐であり、DJの吉泉洋さん(54歳)。ブースは上り下りに一つずつありますがこの日、吉泉さんは「上り担当」です。
CBC
朝の通勤ラッシュ時には、2分おきに行き先の違う電車が入ってきます。案内放送がとにかく大変で、目の前にあるモニターの情報を元に「行き先」、「乗車位置」、「停車駅名」、「乗り換え情報」に至るまでスラスラとアナウンス。しかし、これだけでは終わりません。吉泉さんが「ドアが閉まります」という案内と共に、手元にあるボタンを押しました。このボタンの正体を尋ねると…。
(名鉄名古屋駅・吉泉洋 駅長補佐)「ブザーを鳴らして、ホーム上の係員が旗を上げてくれると、そこで『(扉を)閉めていいよ』という最後のブザーを鳴らして車掌に合図する。それで車掌が(扉を)閉める」
電車の案内だけでなく、上から見ていてドアを閉めていいかどうか判断するのもDJの仕事。ここで、後続の電車の遅れの情報が入りました。すかさず遅延情報アナウンスし、さらに続けて、次に入ってくる電車の案内も忘れません。電車が停車する前に、行き先の最短時間の案内まで入れる、完璧な時間コントロールです。
(名鉄名古屋駅・吉泉洋 駅長補佐)「難しい点は、異常時になるといつもと全然違うことになるので、電車の(時間の)間隔も空いたり、より短くなったりするので。電車の順番が変わったり、そうした場合にすぐ対応して。あそこの場所(小部屋)に1人しかいないので、理想は次の電車が入ってくるまでに放送をし終わらないといけない」
CBC
「迷う駅=迷駅(めいえき)」とも揶揄されてきた名鉄名古屋駅ですが、大規模再開発構想がいま注目されています。2017年に持ち上がった構想では、超巨大駅ビルの建設と、線路を2本から4本に増やす計画が打ち出されました。
しかし、コロナ禍などの影響で計画はいったん白紙に。2024年に新たな基本計画が打ち出される予定です。新しい駅が整備された後、DJブースの役割がなくなってしまうのかは分かりませんが、まだしばらくは吉泉さんはじめDJによる秒刻みのアナウンスが安全運行を支えていきます。
(名鉄名古屋駅・吉泉洋 駅長補佐)「駅でもいろいろな人と出会えるし、そういう所にひかれて入社した。限られた時間の中で、客にわかりやすく丁寧に伝えるのが僕たちの仕事。それが言えた時には達成感はある」
今日も、駅のホームに吉泉さんたちDJの的確な案内アナウンスが流れています。
CBCテレビ「チャント!」2023年12月11日放送より