2023年の岸田内閣は、原材料費高騰に伴う物価高などが国民生活を直撃し、報道各社の内閣支持率は10%台後半まで下落した。発足当初は60%を超えていたが、今年は支持率アップの材料がなく低迷を続けている。12月に入ると、東京地検特捜部が自民党安倍派の政治資金問題の捜査に着手。政権発足以来の危機を迎えている。ジャーナリストの田崎史郎氏は、来年は岸田文雄氏に代わる新しい首相が誕生する可能性が高いと指摘した。(久保 阿礼)
年末になっても東京地検特捜部による安倍派など主要派閥への捜査は終結する気配はない。連日のように党幹部や議員らへの任意聴取が続いており、立件の可否や刑事処分は内閣支持率にも大きな影響を与えることは間違いない。捜査は年を越すことになりそうだが、先行きは流動的で不透明なままだ。田崎氏は来年、岸田政権の最初の正念場についてこう分析する。
「特捜部の捜査は急ピッチに進んでおり、1月20日前後には捜査の行方も見えてくるのではないか。通常国会は同26日の召集で調整していますが、野党からの厳しい追及は2か月ほど、やむことはありません。捜査の対象となっている党内最大派閥の安倍派も政治的な動きは難しい。3月に来年度の予算を通すまで、果たして岸田政権が持つのかどうか。ここが一つの焦点です」
ネットスラングでは「増税メガネ」などとやゆされ、マイナスイメージが広がっている岸田氏。現段階では、続投への意欲は高く、減税と賃上げに最もこだわっているとされる。田崎氏の分析も同じだ。
「この2つを何とか実現したいと考えています。今、辞めるなどとは全く考えていません」
支持率が低空飛行のまま、春を乗り越えたとしても、安心材料は少ない。岸田氏を支えた安倍派が空中分解の危機を迎え、衆院議員の任期が残り2年を切る中で、今後も茂木、麻生両派が岸田氏を支えるかは不透明な状況だ。
特に、茂木敏充幹事長は9月に予定される総裁選への出馬に意欲を示しているとされ、早々と名乗りを上げる可能性もある。田崎氏は茂木氏以外の総裁候補について、石破茂元幹事長(無派閥)、河野太郎デジタル相(麻生派)のほか、岸田派からは、林芳正官房長官、上川陽子外相を候補に挙げた。
「残念ながら、茂木さん、石破さんは党内での人気があまりないので、どこまで支持を集められるかが課題です。捜査の対象となった安倍派の西村康稔前経済産業相、世耕弘成前参院幹事長は総裁選レースから脱落しました。残る岸田派の林さんか上川さん、河野太郎さんの争いになるでしょう。上川さんなら、女性初首相という歴史的な日を迎えるかもしれません」
岸田政権は3年目を迎えられるのか。それとも新しい首相が誕生するのか。
「パーセンテージで表すことは難しいのでやめておきましょう。内閣が変わる可能性は高いと申し上げたいと思います」