証拠があるのになぜ犯人逮捕に至らず…「世田谷一家殺害事件」はどうしたら解決するのか

2000年12月30日の深夜、東京・世田谷区上祖師谷の住宅で、会社員の宮沢みきおさん(当時44)と妻の泰子さん(同41)、にいなちゃん(同8)、礼くん(同6)の一家4人が何者かに殺害された事件。現場には犯人のものと思われる指紋と血痕が残されていたが、犯人逮捕に至らないまま23年を迎えた。みきおさんの母・節子さん(92)は、いまでも犯人逮捕の日まで毎日カレンダーに斜線を入れ続けているという。
12月16日には有志の会が、一人息子を失った節子さんの日々を描いた朗読劇「午前0時のカレンダー 残されたDNAへの思い」(脚本・演出 高橋いさを)を上演し、事件解決への協力を呼び掛けた。
警察への情報提供は、事件発生から現在までに1万4400件を超えているという。さらに現場には犯人の血痕や食べ残しの形跡、靴跡なども揃っていた。パソコンの通信記録から犯人は現場の住宅に10時間以上滞在していたことも分かっている。ここまで証拠が残っていながら未解決であり続けるのはなぜなのか。
先の朗読劇では「DNA捜査の活用」もテーマに盛り込んでいたのだが、これが解決へのカギになっているという。
「日本のDNA型鑑定は、DNAのうち身体的特徴や病気に関する情報が含まれない部分(個人識別のみ)を活用しています。米国をはじめ、海外ではDNA型から遺伝子解析をしていて、髪色から病歴をはじめ属性(性別・年齢・身体的特徴)などの遺伝情報も解明しています。米国ではそれで多くの事件を解決に導いている。犯人の髪の毛や目の色、親の国籍(ルーツ)もわかりますから。しかし、日本ではプライバシーにかかわるため、そこまでは踏み込めません。一方で被害者の人権とは何でしょうか。事件解決に向けて、DNAの個人識別と遺伝情報がともに活用できるよう呼びかけています」(警視庁の捜査本部が置かれている成城署の元署長・土田猛さん)
現在、DNA型の採取や利用、保管や消去などを定めた法律はない。2005年に国会で法制化の必要性が議論されたが、その後はうやむやになっていることから、「DNA活用の法制化」を望む声が出ている。