「ミサイル発射!」箱からカバーを突き破って撃たれるのはなぜ? 実はあの入れ物が重要だった!?

艦船や地上に備えられたミサイルの発射台では、ミサイルは個別に箱型または筒のようなものに入っており、カバーを突き破って発射されます。実はこのカバーが重要な役割を持っていました。
艦船や地上に備えられたミサイルの発射台では、ミサイルは個別に箱型または筒のようなものに入っており、カバーを突き破って発射されます。なぜわざわざ、カバーを破って発射される機構なのでしょうか。
「ミサイル発射!」箱からカバーを突き破って撃たれるのはなぜ?…の画像はこちら >>シースパローが発射される瞬間(画像:アメリカ海軍)。
まずカバーを含めた、ミサイルの入っている箱型または筒状の入れ物を「キャニスター」または「ミサイルキャニスター」と呼びます。主な目的はミサイルの保護や運搬、そして即応性にあります。
ミサイルが登場した初期は、むき出しの状態が主流でしたが、即応性に関して問題も抱えていました。例えば、現在でもむき出しで航空機に搭載する空対空ミサイルの場合、格納庫からミサイル本体を出し各種点検をした後に吊り下げて出撃するため、手間がかかります。航空機は空を飛び目標にある程度近づいて攻撃するので、それでもいいですが、地上や艦艇で使う場合はそうはいきません。
ここでキャニスターにミサイルが入っていれば持ち運びは便利です。さらに、容器そのものが発射装置の代わりをなすため、あらかじめミサイルを装填状態にしておけば、発射管制レーダーなどミサイルを発射可能なシステムを持つ車両や艦艇のミサイルランチャーに搭載し、発射時にはランチャーを目標の方位に向けるだけで、発射の準備をすることもできます。
もちろんミサイルは爆発物の一種なので、キャニスターには不用意な動作による暴発を防ぐ目的もあります。さらに、キャニスター内のミサイルは種類によって異なりますが、数か月から数十年という長期間の保管も考慮に入れているため、発射口の部分は樹脂製カバーで覆われて密閉され、ミサイル本体を外気や水気から守っています。
そしてカバーは発射時に不要となるので、外す手間を省略し、そのままミサイルがカバーを突き破って発射されるわけです。
ほかにも艦艇の場合、甲板上に複数の発射セルが取り付けられいるものもあり、その場合、ロケットのように垂直にミサイルが発射されています。こうした方式はVLS(ヴァーティカル・ローンチ・システム)と呼ばれますが、これにもキャニスターが使われています。
アメリカのイージス艦などの甲板に複数のセルを持つVLSの場合、ミサイルをキャニスターへ入れた状態で、クレーンなどを用いて発射セルへ装填します。 このタイプの場合、北大西洋条約機構(NATO)などいわゆる西側陣営では、主にセル内でブースターを点火させる「ホットローンチ」という方式が採用されています。点火したブースターの排気がセルの隙間から吹き出し、激しい閃光と共に壁状の炎が上がるものです。なお、種類によりますが、こうしたホットローンチのVLSの場合は、ミサイルがフタを突き破ってしまう使い捨てではなく、セルのフタが開閉するタイプもあります。
原子力潜水艦の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射時もVLSを使いますが、水中発射かつ大型のミサイルということでガス圧でミサイルを射出した後、さらに空中でミサイルのブースターに点火する「コールドローンチ」が採用されています。
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閃光と炎と共に撃ち出されるミサイル(画像:アメリカ海軍)。
ほかにもロシアや中国、北朝鮮などの固定式もしくは車載型の弾道ミサイルのキャニスターがありますが、このミサイルも筒状のキャニスターに格納された状態で、ガス圧による「コールドローンチ」で発射されるのですが、車載型弾道ミサイルの発射動画などを確認すると、発射直前に先端のフタが無造作に外れる仕組みになっているようです。ちなみに、北朝鮮で2023年12月18日に発射試験を行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」のキャニスターは、切り離し式から油圧駆動の開閉式になったと報じられています。