羽田空港で起こった航空機の衝突事故で滑走路が1本閉鎖され、運航に様々な制約が生じるなか、「羽田から成田を経由して海外へ向かう」珍しい便が出現しています。異例の“成田経由便”はなぜ生まれたのでしょうか。
1月2日に羽田空港で発生したJAL(日本航空)機と海上保安庁機との滑走路上での衝突事故。この影響で、同空港発着便は8日まで多数の欠航が発生しました。各社がこの事態で空路アクセスの確保に対応するなか、珍しい運航を行う便が出現しています。
それは、羽田から“成田を経由”して欧米とを結ぶ便です。なぜ羽田空港から直線距離で約60kmしか離れていない成田空港を経由する必要があるのでしょうか。
珍し~い「羽田発“成田経由”の国際線」なぜ出現? 羽田の滑走…の画像はこちら >>成田空港を出発するJAL機。写真はイメージ(乗りものニュース編集部撮影)。
「羽田発・成田経由」の運航ルートをとったのは、たとえば6日発ロンドン・ヒースロー空港行きのJALによるJL43便などです。航空機追跡サイト「フライトレーダー24」によると、羽田を10時25分に出発したJL43便は21分間フライトし、10時48分に成田空港へ到着。その後13時2分にヒースロー空港へ向けて飛び立っています。なお、羽田~成田間の旅客便運航は平時では存在しません。
今回の成田経由の手法が採用されたのは、事故現場が他ならぬC滑走路だったことが関係しています。というのも、羽田発の一部の長距離国際線は、C滑走路以外で出発する場合、滑走路の長さが足りなくなってしまうのです。
羽田空港第2ターミナル前のC滑走路は、同空港の4本の滑走路のうち最も長い3360m。平時では欧米線などの長距離国際線、北海道など北へ向かう国内線の発着などを中心に使用され、冬季に多い北風運用時の離陸にも対応しています。
C滑走路以外で、北風運用時に離陸が行われるものは2500mのD滑走路がありますが、これでは一部の便・状況では長さが足りません。また、第1ターミナルと第3ターミナルのあいだにあるA滑走路は3000mでC滑走路の次に長いものの、北風運用時は通常、着陸便のみの対応となっています。
そのため、多くの燃料を搭載する必要のある長距離国際線の一部が今回、国内最長4000mの滑走路を持つ成田空港へいったん飛び、そこで給油したのち、目的地へと向かったというわけです。
なお、事故によるC滑走路閉鎖は8日0時をもって終了し、その後はほぼ通常通り旅客便が発着しています。
7日までの閉鎖中は、羽田に発着する国内エアラインの国際線、そして国内線の一部が、成田発着へと切り替えられたほか、事故直後の成田空港は、羽田へ降りられない一部便の代替着陸(ダイバート)先にもなっています。