DMATの医師が語る被災地…高齢者の避難態勢整わず医療環境が圧迫 避難高齢者の受け入れ態勢が急務

多くの人が避難生活を送る石川県に新潟県内からも災害派遣医療チームDMATのメンバーが支援に入っています。避難所の開設に携わった医師が感じたのは、高齢者の避難体制をめぐる課題でした。

【新潟大学大学院 高橋昌 特任教授】
「一次避難所というのは、かなり生活環境が厳しいというふうに現場からあがってくる」

被災地の現状についてこう話すのは新潟大学大学院の高橋昌特任教授です。

災害派遣医療チーム「DMAT」として1月5日から5日間、石川県の支援に入りました。

【新潟大学大学院 高橋昌 特任教授】
「やはり水が届かないということとと、暖房のための燃料が届かないということで、誤嚥性肺炎もそうだし、生活不活発病であったり、あるいは心を病む、そういった関連的な健康被害、場合によっては命に至る、そういったことが現実に起き始めている状況」

そこで携わったのが…

【石川県 馳浩 知事】
「災害関連死。なんとしても防がねばなりません」

1.5次避難所の開設です。

被災地で緊急的に避難する一次避難に対して、安全で生活環境の整った場所へ移転することを意味する二次避難。

【新潟大学大学院 高橋昌 特任教授】
「もともと1.5次避難所という言葉はなかった。アイデアとして、非常に環境の悪い現場の避難所から少しでも環境のいい地域へ移って、二次避難を待っていただく。その調整の間の1回のバッファー・受け皿としてつくる」

この1.5次避難所の開設に向け、石川県庁で準備作業を行った高橋特任教授。しかし…

【新潟大学大学院 高橋昌 特任教授】
「一番大事な“介護が必要な人”というところがリジェクト(拒否)しちゃっている」

介護士などの受け入れ態勢が整っておらず、本来、すぐに受け入れるべき介護や介助を必要とする人が対象外となっていたのです。これに対し…

【新潟大学大学院 高橋昌 特任教授】
「残っている人は仕方なく残っている。その多くの理由は、そこに高齢者が残されているからなのに。自立できる人たちのための避難所をつくるのではなくて、自立できない人のための避難所、そのためには介護士や色んな人たちを入れなくてはいけない。手間がかかるけど、やるべきはそこですよと」

こうした意見をもとに、10日からは介護の必要な人も1.5次避難所で受け入れるように。

一方、被災地では高齢者の避難態勢が整っておらず、医療環境が圧迫しているといいます。

【新潟大学大学院 高橋昌 特任教授】
「介護や介助、そういったお手伝いが必要な方が直接、介護・介助系の受け入れ先が見つからないので、いったん急性期の病院で受けるということが起きていて。それは、こういう震災のときの外傷患者を受け入れている病院の大きな負担にもなるので、そのへんは準備を進めていかなければいけないと強く思う」

高齢化の進む県内でも今後、災害時に介助の必要な高齢者などを早期に受け入れる体制を整えることは急務です。

【新潟大学大学院 高橋昌 特任教授】
「平時から協定を結んだりとか、想定してどこにどれくらいのベッドがあって、どこに声をかけたら、どういった人たちが集まるのか。傷病者の次に高齢者ではなくて、同時に進めないと、やはり地元の負担が減らない。そういった準備はこれから新潟県、あるいはほかの県も必要になると思う」