選挙で選ばれた国民の代表としての自覚と責任が問われている。
参院は22日の本会議で、国会欠席を続けるNHK党のガーシー氏に対して「議場での陳謝」を科す懲罰を与野党の賛成多数で可決した。ガーシー氏が応じなければ、最も重い除名を検討すべきだとの声が相次いだ。除名されれば議員の身分を失う。欠席を理由とした懲罰は国会初という。
国会議員の職務が、これほど軽んじられた例はない。
国会議員は主権者である国民の負託を受け、全国民の代表として、生活に大きく影響する法律を定める。行政のチェックにも重い責任がある。
その前提となるのが、国会の議論に参加し、議案の採決に加わることである。
ガーシー氏は昨年7月の参院選比例代表で初当選して以来、3回目となる今国会まで一度も登院していない。
この間、毎月130万円近い歳費や100万円の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)、さらにボーナス含め半年で1700万円以上の公金を受け取っている。国民の理解は到底得られまい。
本会議でN党は「ガーシー氏は海外から議員活動をすると公言して当選した」と弁明した。そうであれば、現行のルールを変えるために、国会の場で議論を提起することから始めるべきだ。
暴露系ユーチューバーとして知られるガーシー氏を巡っては著名人を中傷、脅迫した疑いで、警視庁が関係先を家宅捜索している。「不当逮捕の恐れがある」というのが帰国しない理由だが、身勝手で説明責任を果たしていない。
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国会欠席を公言していたにもかかわらず、集票力頼みでガーシー氏を擁立したN党の選挙戦術も問われるべきだ。立花孝志党首はこの間、国会欠席は問題ないとの認識を示してきた。責任は重い。
参院の比例区を巡っては、政党や議員の見識が疑われるケースが相次いでいる。
れいわ新選組が、病気で辞職した議員の残り任期を、5人が1年ずつ辞職と繰り上げ当選を繰り返す「ローテーション制度」で務めると発表した。1年の任期で、十分な議会活動ができるのか疑問だ。
また、18歳の女子学生に飲酒させたと報じられ自民党を離党した議員が、説明もせず居座っている。政党に議席が配分される比例の議員は、党を離れるならば、議席を返上するのが筋である。
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国会議員の身分は、国会会期中の不逮捕特権など憲法で手厚く保障されている。出席議員の3分の2以上の賛成で強制的に身分を奪う除名処分は、多数派による少数派の排除につながる懸念もある。
だからこそ、国会議員には、高い倫理性と自ら襟を正す姿勢が求められる。
ガーシー氏は懲罰可決を受け、除名回避を狙い、陳謝を検討しているというが、実際に帰国するかは不透明だ。あまりにひどい「職場放棄」だ。
参院議長が命じた次回の本会議に出席せず、陳謝しないのであれば、自ら国会議員の職を辞すべきだ。