1月8-9日に米国の第118議会の後半1年が始まりました。11月には大統領・議会選挙が控えています。政権と上院の過半数を握る民主党と下院の過半数を握る共和党、両党が議会でどう振る舞うかによって選挙結果にも影響が出るかもしれません。
○喫緊の課題は予算交渉
米議会の喫緊の課題は、24年度(23年10月-24年9月の1年間)の予算への対処です。昨年成立した継続(つなぎ)予算は一部が1月19日に、残りが2月2日に期限切れとなります。年度末までをカバーする本予算(12本の歳出法あるいは1本にまとめた包括予算)か、少なくとも新たな継続予算が成立しなければ、シャットダウン(政府機能の一部停止)が発生することになります。
○議会指導部は大枠で合意したものの……
民主党のシューマー上院院内総務と共和党のジョンソン下院議長が7日、予算(≒歳出)の大枠について合意しました。これを受けて、上下各院の歳出委員会は詳細な歳出法案の審議を開始します。歳出法案が作成されてそれが各院の本会議で可決、下院案と上院案が同一であれば議会を通過し、大統領の署名を得て成立します。下院案と上院案が異なれば、同一になるまで議会でのすり合わせが行われます(その後は同じ)。
対ウクライナ支援や移民規制強化の行方
今回の大枠での合意には、バイデン大統領が要求する対ウクライナ支援、共和党(とくに保守派)が主張する歳出の大幅削減や移民規制の強化はいずれも含まれていません。それらを交渉の中でどのように予算に組み入れるのか(入れないのか)が今後の焦点になりそうです。
○シャットダウンの影響は軽微?
シャットダウンは、長期化すれば経済や金融市場に悪影響を与えるでしょう。米国債の格付けにも影響しかねません。ただ、過去に何度もみられたように、シャットダウンが短期間であれば、一般市民が少々の不都合を感じる程度で済むでしょう。
○米政治の二極化に拍車も
もっとも、予算交渉のなかで両党が党派色を鮮明にして激しくバトルする可能性はあります。1月15日には大統領予備選がスタートすることもあって、米政治の二極化に拍車がかかるかもしれません。政治の不透明性が高まるならば、長い目でみれば米ドルや米ドル建て資産価格にとって重石になるかもしれません。
○今後の議会動向に要注目
議会指導部が大枠での予算に合意したことは明るい材料ではあります。ただ、このまま議会での交渉がスムーズに進展するかどうかは、依然として不透明です。交渉期間が短すぎるとして3月までの継続予算を成立させようとの提案も浮上しているようです。今後、予断を持たずに議会動向を注視するべきでしょう。
西田明弘(マネースクエア) マネースクエア チーフエコノミスト。日興リサーチセンター、米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、2012年にマネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている同社のWEBサイトで「ファンダメ・ポイント」 や「ウイークリーアウトルック」 などのレポートを配信する他、投資家のための動画配信サイト「M2TV」 でマーケットを解説。 この著者の記事一覧はこちら