〈だから立ちんぼは無くならない〉「ここはディズニーランドか」大久保公園で女性を買い続ける妻子持ち男性。総額330万円を費やし、貸した金を踏み倒されても買春がやめられない呆れた言い分。「家族に罪悪感はありますが…」

“立ちんぼの聖地”ともいわれる新宿・歌舞伎町の大久保公園。昨今の社会問題化を受けて警視庁が取り締まりを強化するも一向に路上売春者がいなくなることはない。その理由は言うまでもなく彼女たちを買う男性がいるからだ。大久保公園の立ちんぼに数百万円を費やし、同時に120万円だまし取られた男性が集英社オンラインの取材に答えた。
警視庁保安課によると、昨年1月から12月19日までに新宿・歌舞伎町にある大久保公園で客待ちをしたとして、売春防止法の疑いで逮捕された女性は140人にのぼるという。そのうちの8割に迫る109人が10~20代で、その動機としてホストクラブやメンズ地下アイドル、メンズコンセプトカフェへの支払いに充てるためという回答が4割を占めた。昨年の夏ごろから世間で注目を集めている悪質なホストクラブによる高額な売掛金(ツケ払い)。これにより借金を背負い、路上売春婦へと堕ちる女性があとを絶たずに社会問題となっている。そうした状況を踏まえ、警視庁は大久保公園周辺での取り締まりを強化。昨年11月からは“立ちんぼ対策”として夜9時から朝8時30分まで大久保公園にバリケードを設置し封鎖することになったのだが……。実話誌系ライターが語る。
夜の大久保公園
「今も深夜になるとバリケードの前で客待ちしている女性はいるし、公園の裏側に立っている女性も多い。結局のところ、”買う側”の男性がいなくならない限り、立ちんぼが消えることはありません」そんななか、昨年の秋ごろまで週3回のペースで大久保公園に通っていたという37歳の会社員男性と接触することができた。男性はおよそ12年ほど前に妻と結婚し、思春期の息子ふたりをもつ父親だ。産業廃棄物の運搬業者に勤務しており、年収は500万円ほど。東京近郊の一軒家に暮らしている。
昨秋まで週3回のペースで大久保公園に通っていたという男性(撮影/集英社オンライン)
「自分で言うのもアレですが、結婚までそれなりに女性とは交際してきましたし、これまで異性関係に不自由したこともありません。ただ、他人よりも性欲が強いフシはあり、高校生のころは彼女に性行為を求めすぎてフラれましたし、結婚前、妻とは1日に4回はしていて、いわゆる“デキ婚”でした」
しかし8年前、2人目の出産を機に妻は育児に追われ、夫婦はセックスレスに。悶々として風俗に通うようになった男性が立ちんぼの存在を知ったのは2年前のこと。「思わず『ここはディズニーランドか!』と叫びそうになるほど、僕にとっては夢の国でした。これまで風俗ではたびたびパネマジ(パネルマジック=プロフィール写真と実物が違うこと)に引っかかってきましたが、ここなら若い女性がズラリと路上に立っていて、実際に見てから決められる。それが大きな魅力でした」それから男性が大久保公園に週3回のペースで通うようになるまで時間はかからなかった。
男娼が客を連れ込んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)
「多くて15万円ほど使う月もありました。でも、ただ性欲を満たすだけだったら、ここまでハマらなかったでしょう。家庭に居場所がない僕にとって、若い女性とコミュニケーションが取れることがうれしかったんです。公園前を歩いていると立ちんぼの子が『あ、今日イッシー(男性のあだ名。仮名)』来てるんだ)』と声を掛けてくれたり、風俗と違ってLINEの交換ができるので、1週間ほど大久保公園に行けない期間があれば『イッシー生きてる?』と心配のLINEもしてきてくれるんです。“半分友達”みたいな関係性が心地よかった」そのうち、「あの子どう?」などと、買う側の男性とも情報交換をするようになり、界隈ではそれなりに知られた存在になった。しかし、そこはしょせん、ならず者が集う場所。それを痛感する出来事がすぐに起こる。「仲よくしていた3人の女性から『期日までに必ず返すから』とお願いされて、お金を貸してしまったんです。合計120万円。うちふたりはバーやホストクラブの売掛金のための借金で、自分で 直接お店に足を運んで支払いました」
だがその後、期日が過ぎても女性たちから借金を返済されることはなく、ほどなく音信不通に。あらかじめ借用書を書かせ、運転免許証なども撮影していたため、女性の実家の両親とも連絡を取ったが、「もう縁を切ってるから本人に返してもらってくれ」と一蹴され、泣き寝入りするしかなかった。
女性の両親に送った手紙の文面(男性提供)
「彼女たちを助けたいという気持ちと、いいカッコしたいという気持ちがあったのですが、完全にだまされました。これで懲りたはずが、その後もホストに売掛金の返済があるという別の女の子に新たに55万円を貸してしまい……。でも、これらも返ってくることはありませんでした。さらに僕が実家に連絡を取ったことを知った女性は『親に連絡したってことは(お金)返さなくてもいいんだよね』と謎の逆ギレをされて……」
男性がホストクラブに通う女性の代わりに支払った売掛金のクレジットカード控え(撮影/集英社オンライン)
この態度に腹を立てた男性は、弁護士に相談して訴状を送った。弁護士から「本人との接触は避けるように」と忠告されたため、昨年の秋ごろから大久保公園には近寄っていない。完全なる自業自得だが、懲りた様子はない。「たしかに今はだまされて落ち込んでるので大久保公園に行く気はありませんが、この一件が落ち着いたらまた行ってしまうかも。やっぱり若い子と遊ぶワクワクが勝ってしまうんですよ……」
お金を貸した女性に借金返済を促すもブロックされてしまったという(男性提供)
結局、男性が大久保公園に落とした金額は330万円を超える。そんな男性に罪の意識と、自身の子どもに対しての罪悪感について問い詰めると、こう答えた。「このお金でもっと旅行とか家族サービスができたかもと考えることはあります。それに自分がやってることは犯罪だという自覚もあります。家族にバレてないとはいえ、大久保公園から帰って家族の顔を見るたびに『こんな父親で申し訳ない』と思ってました。でもそれもあくまで“賢者タイム”の一種。しばらくするとまた行きたくなっちゃうんです」訴訟が終われば、男性はまた大久保公園へ通う日々に戻るのか。立ちんぼを捕まえるだけでは、大久保公園の浄化は進みそうにない。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班