「やった感」を出しただけの、パフォーマンスではないかと疑いたくなる。 派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民党が、政治改革や再発防止策を議論する「政治刷新本部」の初会合を開いた。 本部長に就いた党総裁の岸田文雄首相は「国民の信頼を回復するため、日本の民主主義を守るため、党自らが変わらなければならない」と意気込んだ。 しかし、ふたを開ければ、本当に改革できるのかと疑問を持たざるを得ない布陣である。 メンバーは38人。 驚くのは、事件の渦中にある安倍派から最多の10人、二階派からも2人が起用されたことだ。 麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、森山裕総務会長ら各派閥の領袖(りょうしゅう)も名を連ねる。 派閥による裏金疑惑に端を発した問題の解決を図ろうという組織に、派閥政治の中心にいる重鎮を集めて、思い切った改革案が出せるのか。 初会合では、無派閥の菅義偉前首相から「非常に分かりやすいのは派閥の解消だ。スタートラインとして進めていく必要がある」という意見が上がった。 外交日程で欠席したが、麻生氏は「派閥が不要なんて話はあり得ない」と周囲に漏らすなど、早速けん制する動きが出ている。 今回の事件では、議員会館事務所に強制捜査が入り、現職国会議員が逮捕され、閣僚が相次いで辞任するなど、事態は最悪かつ深刻だ。 岸田首相をはじめ自民党からは、その危機感が伝わってこない。■ ■ 派閥は、政策や利害が共通する議員の集まりである。 自民党内には六つの派閥があり、メンバー98人の安倍派は党内最大派閥で、岸田政権の主要ポストを独占してきた。 その安倍派で今回、パーティー券収入の一部を議員に還流させ、組織的に裏金をつくっていた疑惑が出た。派閥が「政治とカネ」の温床となった可能性がある。 自民党議員らに値上がり確実な未公開株が配られたリクルート事件を受けて1989年に策定された「政治改革大綱」では、派閥解消などが掲げられた。 だが、派閥は政策集団と名前を変えて存続し、「政治とカネ」の問題は残った。 今度こそ、抜本的な問題解決に取り組むべきはずである。■ ■ 共同通信社が実施した世論調査で、自民党派閥の裏金疑惑の解明に向けた党の自浄能力を「ない」「あまりない」と答えた割合は77%に上った。 今回の事件後も、自民党内から聞こえるのは、党による派閥パーティー収支の監査といった、あくまでもパーティー存続を前提にした改革案である。 もはや自浄能力に委ねることはできない。 有識者を含む第三者機関をつくり、派閥にメスを入れるべきだ。 身内の議論に陥ることのないよう、監視を強めたい。