安東弘樹のクルマ向上委員会! 第58回 いいクルマだが敵は偏見? 安東弘樹、中BYDのEV「ATTO3」に乗る

日本でもいよいよ発売となったBYDの電気自動車(EV)「ATTO3」。補助金を使えば300万円台も見えてきそうな中国製EVはコストパフォーマンスが高く、国産EVの強力なライバルとなりそうだ。クルママニアの安東弘樹さんはヒョンデ「IONIQ5」を高く評価していたが、初めて乗るATTO3には何を思うのか。試乗に同行した。

○この価格で装備は充実!

マイナビニュース編集部(以下、編):「ATTO3」に乗るのは今回が初めてだそうですが、まず見た目はどうでしょう?

安東弘樹さん(以下、安):パッと見るとフォルクスワーゲン「ID.4」とかトヨタ自動車「ハリアー」(先代モデル)に似ていますね。

BYDジャパン担当者:押し出しの強さがそこまであるわけでもないですし、普通といえば普通のデザインです。ATTO3はBYDのグローバル戦略モデルで、世界中に輸出していますから、ある意味で無難といいますか、世界中どこでも通じるデザインになっていると思います。

BYDジャパン担当者:内装は「フィットネスジム」と「音楽」がテーマです。

安:これまでにないコンセプトですね(笑)。エクステリアが普通な割には、インテリアが個性的で面白いです。色遣いも珍しい。ドアのトリムなど、随所にソフトパッドが使ってありますね。最新のクルマでも、いかにもプラスチッキーで安っぽいものがありますが、これはいいと思います。操縦桿っぽいシフトノブも好きです。

安:BMWの「i7」に乗ったばかりですが、あの高級車と比較してもみじめな感じがしないのは大したものだと思います。価格でいうと、ATTO3は4分の1くらいですもんね。

編:助手席までパワーシートになっていますし、荷室のリアゲートも電動で開け閉めできる。BYDはバッテリーを自社生産していますから、ほかのEVと比べると、いろいろなところにコストをよりかけられるのかもしれませんね。

BYDジャパン担当者:EVの車両価格は半分くらいがバッテリーですから、自社生産をしている分、コストが抑えられるのは確かです。BYDは半導体もグループ会社で作っているので、内製でやれる部分が大きいので、納車期間も短くできます。1月31日に発売した日本仕様は上海の港から入れていまして、最初のロットは納車が3月に始まるんですが、それ以降も納期は1.5カ月を目指してやっていきます。

ATTO3は「V2L」「V2H」にも対応していますから、補助金もフルで活用できます。去年の基準でいくと補助金が80万円くらいだったので、ATTO3は実質360万円くらいになる計算でした。

安:まず、ステアリングの触感がいいですね。でも、走り始めると「ブオーン」という音が鳴って、特に低速時には目立つんですが、これはけっこう気になります。ある程度のスピードになると消える設定のようですが、これは必要ないですね。

編:回生の強さは「スタンダード」と「ラージャー」(Larger)の2種類、走行モードは「スポーツ」「ノーマル」「エコ」の3種類で、組み合わせは都合6種類ということになるそうです。BYDジャパンの人は、「回生の強さを切り替えても、実際はそこまで大きく変化するわけではない」といっていましたね。

安:では、スポーツモードにして踏んでみますね。お、けっこういい加速ですね! 回生をラージャーにしてみよう。あ、確かに……あまり変化がないですね(笑)。

風切り音はしますけど、基本的に車内は静かです。回生はもう少し強くできるとありがたいかな。あと、ワンペダル走行もできればいいんですが……。ナビは結局、横長の方が落ち着きますね(笑)。

これで十分といいますか、このクルマに乗って不満を抱く人は、あまりいないんじゃないでしょうか。

編:国産の同じクラスのSUV型EVと比べると、ATTO3は200万円くらい安い印象です。

安:確かにコスパは高いです。敵は「偏見」かもしれないですね。

編:EVであることと中国製であることで、二重の偏見がありそうですね。いいクルマなのに、偏見で売れないとすればもったいないです。

安東弘樹 あんどうひろき 1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。 この著者の記事一覧はこちら