‘24年の幕開けとともにスタートした「新NISA」だが、早くも「まだまだわからないことだらけ」という声が上がってきた。
「住宅ローンや教育費が一段落してから夫が定年退職を迎えるまでの期間は、“最後のためどき”と思う人も多いでしょう。ただし、新NISAは投資なので、リスクが伴います。50代以降の投資は、失敗してしまいますと取り戻すのが大変なので、余剰資金で投資して少しずつ増やしていくことが大切になってきます」
そうアドバイスするのは、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さん。無理しないでうまく投資を続けるコツを、Q&Aの形で教えてもらった。
【Q1】途中で減額&休止したい場合はどうしたらいい?
【A1】新NISAは旧NISAと違い、「つみたて投資枠」「成長投資枠」が併用でき、つみたて投資枠は年120万円、成長投資枠は年240万円、トータルで元本1,800万円まで投資ができる。しかも非課税の期間は無期限だ。
金融庁のシミュレーションサイトによると、毎月3万円を3%の利回りで運用できたとすると、20年後で約985万円。夫婦2人がそれぞれ運用すれば、2,000万円に手が届く計算になる。
「つみたて投資を始めたのはいいが、毎月の投資額が多すぎた、という人もいるでしょう。金銭的にキツイという時期があれば減額や休止もできますし、すぐに解約しなくても、そのまま保有し続けることができます」(風呂内さん、以下同)
どうしても手元に現金が必要になったら、いつでも売却できるのもメリットだ。
【Q2】何を基準に商品を選べばいいかわからないときはどう選ぶ?
【A2】投資信託を選ぶ大きなポイントは「純資産総額の大きさ」と「手数料の安さ」の2つ。
「運用中にかかる手数料等の『信託報酬』が低く、長期運用の安心度のものさしである『純資産総額』が大きい商品を優先して選んでみてください」
つみたて投資枠では金融庁の基準をクリアした約270本から選ぶので、比較的安心だ。
【Q3】よく聞く「オルカン(オール・カントリー)」って何?
【A3】三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim全世界株式」に代表される「MSCI ACWI」に連動するタイプの投資信託を指す。
「MSCI ACWIは全世界の株式を対象とした指数です。幅広い地域に投資ができるという点で分散効果が期待されますが、債券は含まれないので積極的な運用といえます。地域の内訳は先進国が9割、新興国が1割程度になっていて、全体からみても米国の比率は高く6割程度を占めています」
債券も投資対象に含めたい場合、複数の対象に投資をする「バランス型投資信託」も選択肢。商品ごとに国内外の株式、債券の投資割合が異なるので中身をチェックしよう。
【Q4】元本割れが怖いが、元本割れするのはどんなとき?
【A4】投資信託の「基準価額」は、投資信託の1口または1万口あたりの値段のことで、投資信託を購入、売却する際は基準価額で取引が行われる。
「投資信託は毎日『基準価額』が決まり、上下を繰り返します。自分が取得した額よりも基準価額が下がったタイミングで売却すると元本割れします。ただ、下がっても売らなければ含み損を抱えただけの状態ということ。
含み損を抱えている時は預貯金など他の資産で対応できるようにしておくことが大切です。投資は当面使わない余剰資金の範囲内で」
【Q5】NISAを売却したら、確定申告は必要?
【A5】NISAで投資信託を売却した後の売却益は非課税扱いになるので、確定申告は不要。
「売却益とは別に、運用会社の判断で投資信託から支払われる『分配金』があり、これも非課税です。
また『成長投資枠』では個別の株式にも投資ができます。銘柄によって得られる『配当金』も非課税です。受け取り方法を株式数比例配分方式にしておきましょう」
【Q6】NISA口座の財産は亡くなったら相続される?
【A6】NISA口座で投資していた人が亡くなったら、相続人は金融機関に「非課税口座開設者死亡届出書」などの書類を提出する。受理されるとNISA口座の金融商品は相続人の特定口座や一般口座に移管されて、相続財産として課税対象になる。
「相続人の口座に移管される際の取得価額は、移管される日ではなく、相続が発生した日の終値に相当する金額になります」
【Q7】金融機関を変更したいときの注意点は?
【A7】最初にNISA口座を開設した金融機関で、商品のラインナップやサービスに満足できず、ほかの金融機関に変更したいと考えている人もいるだろう。
「NISA口座は1人1口座しか開設できないので、金融機関を変更するしかありません。1年に1回変更できますが、変更前の口座で保有している商品は、変更後の口座に移すことはできないので、変更前後の口座をそれぞれ管理することになります」
【Q8】つみたて投資枠と成長投資枠のバランスはどうすればいい?
【A8】つみたて投資枠、成長投資枠、あわせて新NISAの投資上限額は1,800万円だが、そのうち1,200万円までは成長投資枠でも使うことができる。
「一度にまとまった金額で購入するのではなく、購入タイミングを分散できる『つみたて』のほうが取り組みやすい人は多いと思います。つみたて投資枠のみを活用しても良いですし、余剰金がある場合は、成長投資枠で個別株を購入して配当金や株主優待を楽しむのも良いでしょう。成長投資枠では、REITやETF(上場投資信託)への投資もできます。あくまでバランスよく」
【Q9】額が上限(1,800万円)に達したらどうするべき?
【A9】新NISAは非課税で保有できる期間は無期限だが、非課税になる元本の上限は1,800万円と決まっているので、上回る部分は他の課税口座での運用となる。
「新NISAは、配偶者と2人分で、最大3,600万円の運用が可能になります。上限に達したら、一部を売却すると翌年、売却益を抜いた投資額分の枠が復活するので、その枠で新たな商品を買うという方法があるんです」
上手に運用すればコツコツ貯めて大きく増やすことも可能なので、今からわからないことをクリアして、初心者から脱却しよう!