[ウクライナ侵攻1年]
ウクライナ出身の歌手、ナターシャ・グジーさん(43)が、母国の文化を精力的に発信している。ロシアがウクライナに軍事侵攻した昨年は、民族楽器バンドゥーラを携えて36都道府県でコンサートを実施。今年5月には県内でも予定しているほか、現地の困窮者から買い取った民族衣装のチャリティー販売など多彩な取り組みを企画。「かわいそうではなく、ウクライナを好きになって支援してほしい」。それが復興まで見据えた息の長い支援につながると信じている。(社会部・島袋晋作)
関連記事「家族はロシアの占領地の近く…」 ウクライナから沖縄に避難した4人、祖国への思い語る ・・・[ウクライナ侵攻1年] ロシアによるウクライナ侵攻から1年になるのを前に、ウクライナから沖縄に逃れてきた避難者たち・・・www.okinawatimes.co.jp 6歳の時、父親が勤めていたチェルノブイリ原発で事故が起き、避難生活を余儀なくされた。たどり着いたウクライナの首都キーウ(キエフ)で、避難した子どもたちを中心につくられた音楽団に入り、そのメンバーで16歳の時に初来日した。その後、父親が病になり歌手の夢を諦めかけたが、音楽団の励ましで再起し、19歳の時に再来日。以来、日本語を習得し、東京都内を拠点に音楽や自らの体験を伝える活動を続ける。
■福島の原発事故 重なる記憶
この間、2011年3月11日の東日本大震災で福島第1原発の事故があった。自身の体験を重ねて心を痛めたが、「日本だからこそ自分の体験や思いを伝えていかなければ」と現在の活動の基盤を築いた。
昨年2月24日、ロシアが母国ウクライナに軍事侵攻。それから1年になる今も戦闘は続く。「今は大変な時。いろんな困難の中で必死に生活を送っている」と語る。
国に残る姉や親戚の安否を気にかけ、小まめに連絡を取る一方、全都道府県を回るコンサートを企画。ウクライナ発祥の家庭料理「ボルシチ」のレトルト食品を開発し、売上の一部を支援に充てている。
■無関心が争いを生み出す
「チェルノブイリ」も「3・11」も時間の経過とともに人々の関心が薄れていった。「無関心というものがいろいろな争いを生み出すと思う」。悲惨な状況をただ伝えるだけでは、息の長い支援にはつながらないと考えている。
「ウクライナの人たちは困難の中で強い心を持ち、歌を歌って支え合っているということを伝えたい。一人でも多くの人にウクライナを好きになってほしい」
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5月7日には琉球朝日放送の主催で、浦添市のアイム・ユニバースてだこホールでコンサートを開く。県内での公演は、震災の避難者支援で久米島などで開いた12年以来11年ぶり。
「沖縄の皆さんもいろんな困難を乗り越えてきた。ふるさとや平和への思いがウクライナの人たちとつながっている部分があるかもしれない。平和について、互いに考える大切な時間になればいいなと思う」