〈宮城・未明の突入〉「パンパン!」「ピカッ!」殺人未遂で指名手配されていた絆會No.2を逮捕!「2年前から潜伏していた」注目される神戸“ラーメン組長”殺人事件との関連は?

2020年9月、長野県宮田村で男性を銃撃してけがを負わせたとして殺人未遂容疑で警察庁が全国指名手配していた指定暴力団絆會幹部、金成行容疑者(55)=渡世名、金澤成樹=が仙台市内に潜伏していたことがわかり、長野・宮城両県警の捜査員が2月1日未明、潜伏先のアパートに突入して逮捕した。金容疑者は昨年4月に神戸市内のラーメン店で山口組系暴力団組長が射殺された事件にも関与している可能性があると一部メディアが報じており、兵庫県警も関心を寄せている。
逮捕容疑は2020年9月28日、宮田村の飲食店駐車場でかつて同じ暴力団組織に所属していた男性(51)を殺害しようと拳銃を発砲した疑い。男性は脇の下を撃たれて重傷を負い、金容疑者はそのまま逃亡していた。真冬の未明の突入劇は、閃光弾で鮮やかに彩られた。現場は仙台市若林区のアパートの一室だ。近くに住む60代の女性は、まだ興奮が冷めやらない様子だった。「午前3時40分頃だったと思うんですけど、パン!て乾いた音がしたんですよ。それで目が覚めて『どうしたんだろ』と思った矢先に、パンパン!と今度は連続で音が鳴ったんです。爆竹かイタズラか、あるいは何かの爆発で火事でも起きてなきゃいいけどと思って窓の外を覗いたら、暗がりの中に一際明るい照明みたいなのが見えて、現場のアパートのあたりを照らしていました」
重要指名手配されていた金容疑者
付近にパトカーも数台待機していた。近隣住民の50代女性も同じような光景を見ていた。「急な出来事だったんで時計も見てなかったんですけど、大体4時前くらいですかね。パン!パンパン!て運動会の徒競走のスタートに使うピストル音みたいなのが聞こえたんですよ。恐る恐る外を見てくれた主人が『警察が大勢来てるぞ』というので様子を見に行くと、アパートのまわりに沢山の警察官とパトカーがいました。暗くてあまりよく見えなかったけど、じっと見てたらアパート2階の窓から白い煙がぼんやりと出てるのが見えました」
両県警は突入に備え、時間をかけて慎重に準備を進めていたようだ。別の50代女性はこう語る。「なんでも犯人にバレないように昨夜からアパートの住人たちは近くのホテルに避難させられて、かん口令も敷かれたそうですよ。そんなことを知らされてない私たちとしては、夜も明けぬうちに発砲音がしてびっくりしましたけどね。アパートの1階には美容室とかカフェとかコインランドリーも入ってるから、町のみんなもよく使うし、横を通れば誰かしらはいるくらいには人通りがあるようなところなんですよ。そんな目につくアパートに逃亡犯が住んでいたなんて夢にも思いませんでした」「潜伏」というには余りに目立ちすぎるようなロケーションを逆手に取ったのか、金容疑者は長期にわたってこのアパートを拠点にしていたようだ。近くの60代男性は噂を耳にしていた。「容疑者があの部屋には住み始めたのは、2年くらい前からだと思います。町内会費の回収にまわってた人が言ってましたから。でもちゃんと支払われたことはないみたいで、『住んでるはずなのにいつ訪ねても誰も出てこない』とこぼしていましたよ。夜には電気がついてるし、スウェットとかジャージみたいな格好で細身のおじさんが入っていくのを見たって人もいたから『おかしいね』と噂にもなっていたんです。実際に住んでいたのが銃を使った凶悪犯だったなんて、町の人たちに何もなくて本当によかったですよ」
警視庁管轄の交番にも貼られていた金容疑者の手配書
金容疑者は絆會の織田絆誠代表と少年時代から行動を共にしていた懐刀で、所属先の山口組から分裂を繰り返す過程でも常に側近として支えてきたとみられている。しかし、長期にわたる逃亡で組織内の空気も変わった可能性があると、暴力団捜査担当の社会部記者が語る。「捜査当局への情報提供は匿名できていますが、かなり具体的でしたし、我々サツまわりは『身内の裏切りじゃないか?』と噂しています。金澤は絆會ではNo.2の若頭を務める有名人ですが、一般人にも“その筋”の人間だとわかるくらい特徴的な顔をしているわけじゃない。ネットや一部メディアでは『連続企業爆破事件の桐島に関連してコチラも逮捕されたのでは?』と噂になっているようですが、それはまったく関係ありません。両県警は数日前から準備して、本人の行動確認をしてから踏み込んでいます。一部SNSでは銃撃戦があったことを思わせるような書き込みがありましたが、閃光弾を使用したことを勘違いしただけでしょう。ただし、銃を所持している可能性が高いため、突入には慎重を期して経験値の高い特殊捜査班があたりました。金澤は突入時にもさして抵抗をみせることなく確保され、自分の身分も偽っていないので、おそらく観念したのでしょう」
金澤若頭については、これまで何度か自殺説が浮上していたという。記者が続ける。「同年輩で体つきが似た男が首を吊ったとか自殺したとかいう話が出る度に『どうも金澤らしい』という噂が回ってきていましたが、捜査のかく乱を図るために絆會がそうした情報をばらまいたとみられます。長野の本件については認否も明らかにしていませんが、今後の捜査で注目されるのはやはり神戸のラーメン店店主殺人事件への関連でしょう。事件後に出回った防犯ビデオ映像に映った不審者の背格好や歩き方を見て『あれは金澤若頭だ』という人も確かにいます」
余嶋さんが殺害される直前の店前の防犯カメラの画像
神戸のラーメン店店主殺人事件とは、昨年4月22日、神戸市長田区のラーメン店「龍の髭」で店主の余嶋学さん(当時57歳)が射殺された事件のことだ。余嶋さんは「湊学」の渡世名を持つ現役の六代目山口組系暴力団組長でもあった。絆會とは敵対関係にあり、犯行時刻前後の49秒間に同店を出入りした男の防犯ビデオ映像が話題になったのは記憶に新しいところだ。集英社オンラインでも昨年6月8日配信の記事で詳しく報じている。兵庫県警担当記者が語る。「兵庫県警はラーメン店の事件に関連し、金澤若頭を参考人として行方を追っていたようです。今回は重要指名手配犯として捜査していた長野県警の事件が優先されますが、調べがひと段落したら兵庫県警に身柄を引き渡し、ラーメン店主殺害事件との関連性を調べることになりそうです、逃走を手助けしたり、匿っていた組員がいる可能性もあり入念な捜査が続くでしょう」急転直下の逮捕劇が、次なる事件の解決にもつながるか、今後の捜査の行方が注目される。
殺害された余嶋さん