〈ヤマト委託・パート切り騒動〉「生活は大変になるけど…」約2.8万人が1月で契約終了。当事者たちに今の心境を聞いてみた。ヤマト社員は「本社はいったい何を考えているのか」

2月1日、ヤマト運輸はチラシやカタログなど小型荷物の配達業務に携わっていたクロネコメイトとパート社員約2万8000人との契約を1月末に終了したことを発表した。昨年6月に、この“委託・パート切り”につながる日本郵便との協業を発表して以来、集英社オンラインは4回にわたって現場の不満と混乱ぶりを報じてきたが、実際に退職した人たちや、正社員たちは今、何を思うのか。
「昨日(2月1日)はウチのセンターにも重い空気が漂ってましたよ。メイトさん(クロネコメイト=小型荷物の配達を委託されていた個人事業主のこと)とは気まずくて、『これまでお世話になりました』とか『またお茶でもしましょう』くらいの軽い挨拶で終わりましたから……」そうため息をつくのは、関西エリアで長年パート社員として働いている女性だ。ヤマト運輸は日本郵便との協業に伴い、ポスト投函が可能な小型荷物配達サービス「クロネコDM便」を今年1月末に終了させた。これによって、このサービスの配達業務を担当していた個人事業主(クロネコメイト)2万5000人と、仕分け業務をしていたパート社員約3150人が契約終了となり退職した。パート社員に関しては、当初、約4500人すべてが契約終了する予定だったが、茨城県土浦市にあるベース店(=ターミナル拠点)で働くヤマトのパート社員18人が労働組合を結成し、10月16日に団体交渉を行なうと、ヤマト本社は対応を一変。パート社員の契約終了を見直して全員の希望を確認する方針となり、うち1350人が社内に再配置というかたちでヤマト運輸に残ることとなった。しかし、クロネコメイトたちには、そのような打診はなかったようだ。冒頭の女性パート社員は言う。
ヤマト運輸(撮影/集英社オンライン)
「ウチのセンター(宅急便センター)でも昨年の11月ごろに本社の対応がガラリと変わって、私たちのようなパート社員には配置転換の相談がありました。でもDM便に携わるメイトさんへの対応は一切変わらず……。結局、ウチも10名ほどのメイトさんが契約を打ち切られました。通常、誰かが辞めるときは飲み会やご飯会が行われるんですが、昨日はそうした雰囲気は一切ありませんでしたね」クロネコメイトは50~60代も多く、新たな働き口を見つけることに不安を募らせる人も多かったという。「『この年齢で雇ってくれるか不安だ』とか『新しい職場でまた一からで溶け込めるだろうか』と不安を口にされる方もいました。メイトさんの中には、ここのお給料で親の介護費や子どもの学費を出している方もいましたし……。なによりここで休憩時間に同僚とおしゃべりすることを楽しみにしてた主婦のメイトさんも多く、あるメイトさんは『みんなと離れ離れになるのが寂しい』と言ってましたよ」
一方で、配置転換の打診を受け入れたパート社員も新たな火種に…。ベース店で働くヤマト正社員はこう証言する。「DM便からクール便や宅急便の仕分け業務に配置転換されたパートさんもいますが、運送業界では1~2月は閑散期。荷物の量に対して、パート社員が多すぎるという状況になっています。もっと他に人が足りない場所はあるというのに、本社はいったい何を考えているのか……」前述したように、配置転換を受け入れずに退職したパート社員は約3150人で、全体のおよそ7割にあたる。これほどの人数があえて退職したのはなぜか。ヤマト正社員が続ける。「ウチのベース店でも『今後もどういう風に扱われるかわからない』とか『もう信用できない』と愚痴をこぼすパートさんはいましたよ。シングルマザーで親の入院費を工面していたパートさんも、『これからお金のやりくりは大変になるけど、もうヤマトにはいたくないので』と言って辞めていきました」
ヤマト社員に配布された「外部労働組合に対する自衛策」についての通達書
首都圏でDM便ドライバーとして働いていた40代女性は、配置転換を打診されたものの、それを蹴って1月末で退職したという。「今さら受付業務や荷物の仕分けに回されても困ってしまうし、収入も減ってしまうから転職することに決めました。基本給3ヶ月分の慰労金ももらえることだし、しばらくゆっくり転職活動をします。同じように辞めたパート社員の中には『やっとヤマトから解放された』と話す人もいましたね」ヤマト運輸は1日、今回の契約終了に対して自社のホームページに「当該業務を支えていただいたすべての皆さまに、改めて心から感謝を申し上げます」と記したが、退職した人たちの声を聞くと、決してきれいな幕引きとはいえないようだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班