能登半島地震は、発生から1か月を過ぎた。能登地方は、伝統工芸の宝庫。なかでも「輪島塗」は、輪島市内の工房が何件も倒壊。再開のめどは立っていない状態だ。
金沢市のみなし仮設に住む小坂朗さん(67)は、輪島塗の「上塗り」という最終工程に近い仕事を担当。「自分は今すぐにでも仕事ができるんですが、他の工程の人と連絡がつかない。輪島塗は工程がたくさんあるので、全員がそろわないとできないんです」。関係者によると、輪島塗には木地師によるお椀の成形をはじめ、木地固め、木地磨き、下塗り、中塗りなど20を超えるの工程が存在。それぞれを担当する職人が集まらないと、輪島塗は完成しない。
小坂さんは、もともと輪島市内の孤立集落に住んでいた。「もう住めないなって、住民みんなで話してます」。孤立集落の人は、新しい住居を探すだけでも大きな負担がかかる。「1人1人が、似たような事情を抱えている。みんながひとつの場所に集まるのは、なかなか難しい」。
輪島塗は日本でも有数の工芸。伝統を重んじ、こだわりが強いだけに、多くの手間暇がかけらている。「私の会社は、原料のうるしが全部ダメになったので、一からそろえなるので半年かそこらがかかる。そこから職人を集めて…だと、もう年単位の話になってくる」と小坂さん。「みんなが自分の仕事に誇りを持っているのが輪島塗。今回ばかりは、工程の複雑さが再開を遅らせてしまうかもしれませんね」と現状を嘆いていた。(樋口 智城)