タクシーのドライバー不足の解消に向けて、石垣市が4月から「ライドシェア」の運用を始めると発表した。タクシー会社の管理下で、2種免許を持たない一般のドライバーが有償で客を運ぶ。安全の確保が最優先なのは言うまでもないが、運用の開始まで2カ月である。ドライバーの育成と教育を徹底し、4月開始のスケジュールありきにならないようにしてもらいたい。 政府が4月にライドシェアを一部解禁する方針であることを踏まえた県内で初の試みとなる。クルーズ船の寄港に伴うインバウンド観光の拡大や、季節や期間、時間で変動する移動需要に対応していくとしている。 新型コロナウイルスの感染拡大で全国的にタクシーの客足は遠のき、離職したドライバーは全体の約2割に上る。石垣市内も例外ではなく、2019年4月に368人いた乗務員は23年4月の時点で287人まで落ち込んだ。 一方、コロナの収束で旅行需要は回復している。クルーズ船だけでも石垣市には2月に10回、3月は20回の寄港が予定されている。港から市街地まで車で約10分かかるが、必ずしも専用のシャトルバスは用意されていない。 船を降りても市街地までのアクセスが悪ければ、おもてなしなどあったものではない。バスの運行とともに円滑なタクシーの配車は地元への経済効果にもつながる。寄港地にはタクシー乗り場も整備されておらず、受け入れ態勢が課題になっていることは間違いない。■ ■ ライドシェアの検討は、全国的には一般のドライバーが自家用車を使う形で進められている。石垣市はタクシー会社の遊休車両を活用する方針で、「石垣版ライドシェア」と銘打った。ドライバーの確保や安全教育の面でタクシー会社を後押ししていく。 今後は実施主体となる業界側の理解と協力が欠かせないが、県ハイヤー・タクシー協会八重山支部は慎重姿勢だ。支部長の伊良皆高司氏は市の方針に理解を示しつつ、人手不足は解消されつつあるという認識で、状況を冷静に見極める必要があると語っている。 仮にもライドシェアで客を取り合うことになったり、既存のドライバーの待遇が悪くなったりすれば本末転倒である。 ドライバー不足の根本的な対策は「稼げる仕事」として、賃金の引き上げを含めた待遇の向上であることを忘れてはならない。■ ■ ライドシェアは、スマートフォンの配車アプリを使って米国や中国で普及している一方で、利用者の安全をどう確保するかも課題になっている。利用者がドライバーを評価する制度で、悪質な乗務員をふるいにかけるといった取り組みもある。 石垣市では今後、島のタクシーの「空白地」で一般ドライバーが自家用車を使うライドシェアや、株式会社の参画についても検討を重ねていくとしている。利用者の安全確保はもちろんのこと、ドライバーの働く環境の向上を両輪で進めなければならない。