親子の再会願い“苦渋の判断”…「一括帰国なら制裁解除に反対しない」拉致被害者家族会が新たな方針

北朝鮮による拉致被害者の家族会と救う会は2月25日、被害者の救出へ新たな活動方針を示しました。被害者の親世代が高齢となる中、その活動方針は「苦渋の判断」のもと決定されました。

【拉致被害者家族会 横田拓也 代表】
「苦しい、ギリギリの判断の中で今回の運動方針をつくった」

25日、都内で開かれた家族会と救う会の合同幹事会。

新たに盛り込まれた運動方針は、「親世代の家族が存命のうちに、全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、日本が北朝鮮にかけている独自制裁を解除することに反対しない」というものです。

日本が北朝鮮に対し、独自に行っている経済制裁には、かつて新潟港と北朝鮮を結んでいた万景峰号の入港禁止が含まれています。

【拉致被害者家族会 横田拓也 代表】
「まさに私たちの親世代が家族会の代表、最前線で戦っていた頃に岸壁で船に向かって手を挙げて(万景峰号に)『帰れ』と」

親世代が先頭に立ち、働きかけてきた北朝鮮への経済制裁。

「その解除に反対しない」という方針を盛り込んだ思いを横田めぐみさんの弟で家族会代表の拓也さんは…

【拉致被害者家族会 横田拓也 代表】
「この主権国家の領土を踏みにじって無実の13歳の少女を拉致したあげく、50年近く帰さない相手に平静心を保って対話をしましょうなんてことは本当は苦しい。それでも、私はめぐみに会いたいし、母・早紀江にめぐみと再会してもらいたいし、日本のこの地で抱き合ってもらいたい。そういった気持ちはどの家族も一緒。苦渋の判断です」

その中で強調するのは、親子の再会というタイムリミットです。

【拉致被害者家族会 横田拓也 代表】
「万が一、親世代が亡くなった後に拉致被害者を帰国させたとしても解決とは見なさず、北朝鮮に対して、制御の効かない怒りに舵を切ることを正しく伝えてください」

今年に入り、北朝鮮は金正恩総書記が能登半島地震に際し、見舞いの電報を出すなど、日本への発信が続いていて、家族会はこれを重要局面と捉えています。

有本恵子さんの父・明弘さんは95歳。そして、めぐみさんの母・早紀江さんは88歳に…下された苦渋の判断は残された時間の短さを表しています。