吉原宿 富士市の「つけナポリタン」の味は?「お客さんが『なに、これ!』と驚く味」…東海道五十三次・静岡の宿場町新名物

東海道五十三次の県内にある地点ごとに現在の注目スポット、グルメなどを取り上げる企画(随時掲載)の今回は、県内4番目にあたる「吉原宿」。富士市のご当地グルメ「つけナポリタン」を堪能した。店舗によって味は違うが、県外からも多くの人が訪れる名物発祥の喫茶店「coffee shop アドニス」で同メニュー(税込み1680円)を味わった。
未知なる味を堪能した。以前に岳南電車の吉原本町駅付近の取材に訪れた時から気になっていた「つけナポリタン」。その後は行く機会に恵まれなかったが、今企画で“元祖”を求めて足を運んだ。
吉原商店街の一角に店を構えるアドニスは創業79年目を迎える。昔ながらの店内では店主の市川和典さん(49)が、優しく迎えてくれた。早く食べたい思いをぐっと抑えて、ベールに包まれたメニュー誕生の話に耳を傾けた。
富士市のご当地グルメは2008年にテレビ番組の企画で開発された。都内の有名つけ麺店「めん徳二代目つじ田」店主・辻田雄大さんと市川さんがタッグを組んだ。当時の人気メニューだったナポリタンをベースに10日間で完成にこぎつけた。「つけめんは地方でやっていなかった時代。文化がなかっただけにびっくりした」と振り返った。
「どんな味か」。記者のストレートな質問に、市川さんは「食べたことがない味。お客さんも『なに、これ!』と驚く味ですね」とニンマリ。お腹を空かせた記者の前に置かれた「つけナポリタン」に熱視線を注いだ。ご当地グルメとして開発されたこともあり、もちもちの麺の上には桜エビが乗る。トマトをベースにしたスープには、厚みのある地元産の蒸し鶏、味たま、チンゲン菜、マッシュルームにチーズと具だくさんだ。
まず一口。トマトの酸味が口に広がるが、チーズを絡ませるとまろやかな味わいに。具が豊富で飽きることがない。だんだんとスープの中に桜エビが混じると鼻孔をくすぐるにおいが変わっていく。それが基本の食べ方。次に勧められたのがレモンを麺にしぼり、食べるもの。酸味が増してすっぱくなるかと思いきや、逆に酸味が引き、さっぱりした味わいになった。
ボリュームがあって満腹になったが、3種類あるシメは「どれもおいしいですよ」と市川さん。コショウがこれでもとかかったチーズご飯、にんにくがしっかり塗られたガーリックトーストに、和風だし。全て味わったが、市川さんの言葉は本当だった。この味は来店した人だけが分かる楽しみ。最後に市川さんは「これだけ続いてファンがいるということは、つけナポリタンがおいしいということ。食べたことがない食べ物だと思うのでぜひ食べてほしい」と呼びかけた。(伊藤 明日香)