「ケンちゃんにお金は任せられない」と遺産配分で揉めた“金庫番”の姉は「いきなり部屋の入口で倒れた」ボンボン夫とネグレクト妻を姉殺害の容疑で再逮捕”〈浅草・4歳児毒殺〉

東京都台東区のホテル経営、細谷健一(43)と妻の志保(37)の両容疑者が次女(昨年3月、4歳で死亡)殺害容疑で逮捕された事件に絡み、警視庁捜査1課浅草署捜査本部は3月6日、2人が健一容疑者の姉も殺害していた疑いが強まったとして両容疑者を殺人の疑いで再逮捕した。6年前に不審死した姉の遺体からは次女殺害にも使用された車の不凍液の成分が検出されており、同様の手口で肉親を連続毒殺した残酷さが浮き彫りになった。
調べによると両容疑者は2018年4月ごろ、台東区の自宅マンションの部屋などで健一容疑者の姉の細谷美奈子さん(当時41歳)に不凍液を摂取させて同29日ごろに殺害した疑い。
逮捕された細谷健一容疑者(撮影/集英社オンライン)
美奈子さんは当時、両容疑者と同じマンションの別の階に住んでおり、同年5月に親戚から「連絡がつかなくなった」と110番通報があり、自室で死んでいるのが見つかった。美奈子さんは数日前から頭痛や発熱を訴え、医療機関を受診していたが、特に既往症もなかったために、死後に東京都監察医務院が行政解剖を実施した。行政解剖での死因は「敗血症」とされたが、敗血症を引き起こした原因までは特定できなかった。しかし、昨年3月に変死した次女の美輝ちゃんの事件を捜査していた警視庁が、保存されていた美奈子さんの遺体の一部を調べたところ、美輝ちゃんの時と同じ不凍液の有害成分「エチレングリコール」を検出した。社会部デスクが解説する。「押収した健一・志保夫妻のパソコンやスマートフォンの解析から、2018年3月から4月にかけて数回にわたって不凍液を購入した履歴が判明しています。同年6月にはホテルの経営母体『ホソヤ産業』創業者である父親が死去し、健一容疑者は会社の代表取締役に就任するとともに、美奈子さん名義のものも含めて不動産などの財産も軒並み相続した。要するに健一・志保夫妻が“金のなる木”を、姉の殺人という極めて短絡的で残忍な方法で入手した疑いが強まり、再逮捕に至ったということです」資産家のボンボンとして生まれ育ち、相続の支障となる親族を毒殺しようと企図する構図は、昨年3月に大阪府警が着手した京都タリウム殺人事件のデジャブのようだ。実際、美奈子さんはホソヤ産業の経理も担当しており、健一容疑者の「浅草ホテル旅籠」の放漫経営ぶりに心を痛めていた。健一容疑者の知人は、美輝ちゃん殺害事件の取材当時、記者にこう答えていた。
細谷一家が住んでいたビル(撮影/集英社オンライン)
「私はお姉さん(殺害)に関しても志保の意思が強く働いていると思います。当時お姉さんはホソヤ産業の経理を務めていて、『ケンちゃんにはお金を任せられない』とよく言っていました。その後に同社の創業者のお父さんが亡くなって、健一ともう一人のお姉さんが遺産配分をめぐって揉めたという人もいたのですが、結果的にはわずかに健一の取り分が多い形で双方納得して受け取っています。ですが、あのとき、志保が健一を背後から煽っていたのは間違いありません。当初、相続のことなど何も気にしていなかった健一が、『姉が遺産を多く取ろうと画策して動いている』と言い出すようになりましたから。こんなふうに、さまざまな場面で志保の意思が働いているんですよ」
そして、美奈子さんの突然死をめぐっても、関係者からは疑問の声が上がっていた。健一容疑者の父、Iさんの兄の妻(86)はこう証言していた。
ゴミ屋敷だった細谷家(知人提供)
「亡くなった美奈子ちゃんが生まれたばかりのころは、Iさんが革製品の会社を立ち上げたばかりで『忙しすぎて娘2人の面倒を見るのは無理だ』ってことで、美奈子ちゃんのことを2年ほどウチで預かっていたんですよ。大人しい子という印象です。学校を卒業してからは生命保険の営業をやっていたんだけど、それを辞めて、たしかコンピュータ関係の仕事をしていたとも聞いてました。親戚から『美奈子ちゃんが亡くなった』と聞いたときにはビックリしたんですよ。ケンちゃん(健一容疑者)のお母さんのYさんやIさんと違って、入院しているわけでもなくいきなり倒れたみたいなので。でも、美奈子ちゃんが亡くなる数ヶ月くらい前に、Yさんから『最近、よく美奈子が風邪を引くのよ』と聞いてましたね。もちろん美奈子ちゃんには持病もなかったので、不思議に思ってたんです。そしたらあんな感じで亡くなってしまって…」Iさんの兄の妻は、さらにこう続けた。「これは他の親戚に聞いた話なんだけど、美奈子ちゃんは部屋の入口のドア付近で倒れていたらしくて。そのちょっと前にお母さんのYさんは心不全で亡くなってたし、この時期、お父さんのIさんも血液系の難病で入院してたのよ。一番上のお姉ちゃんは若くしてお嫁に行ったから、実家を出ていた。ニュースでも『姉も殺した可能性がある』と匂わせ報道してたけど、たしかに疑われても仕方ないよね。実際に、あの年には1年間の間にケンちゃんのお母さん、姉の美奈子ちゃん、お父さんの3人が立て続けに亡くなったんだから…」
志保容疑者(知人提供)
美奈子さん「殺害」の約1年後の2019年3月、両容疑者はささいなことからケンカ、志保容疑者は自宅ベランダに放火して逮捕され、美輝ちゃんを含めた子ども3人は東京都児童相談センターに保護された。行政の介入によっていったんは「守られた命」を、志保容疑者が北海道に残っていた父親を呼び寄せ、監護者となってもらうことで「奪還」したにもかかわらず、過去に覚えた手口で摘み取った両容疑者。この二人を鬼畜の親と呼ばずして、なんと呼ぶのか。新たな局面を迎えた事件に、憤りしか感じられない。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班