「あれもこれもしなきゃと頭がいっぱい」 人手不足の障がい者介護、ケア一手に 送迎や入浴も

[障がい者介護の行方 北部事業所 受け入れ停止](下)
職員の人材不足などで、2021年に廃止した名護療育医療センターの生活介護事業所「まんてん」。地域支援課の担当者は「利用者やご家族が行き場をなくし、大変な状況に置かれているのは手に取るように分かる。すぐに応えられず、本当に申し訳ない」と声を落とす。
沖縄本島中南部と比べて、北部地域は障がい者介護を担う事業所がそもそも少ない。医療的ケアなども必要となると数はさらに減る。
■最低限のサービスも難しく
同所は重い障がいがある人の受け皿になろうと18年に開所した。廃止後、センターには利用者の家族などから「再開したら、いつでも連絡してください」との要望が多数寄せられた。
関連記事シングルマザー、朝3時にワンオペ介護 障がいのある息子から目を離せず働けず 通所先なく・・・[障がい者介護の行方 北部事業所 受け入れ停止](上) 午前3時半。本島北部に住むシングルマザーの久美子さん(55・・・www.okinawatimes.co.jp 利用者の枠を制限し、確保できている職員だけで運営を維持しようとしたが、最低限のサービス提供も難しくなったという。
玉城邦人診療部長は「障がい福祉に熱意のある人材育成が急務。事業者と行政が連携して取り組んでいくべきだ」と語った。
◇ ◇
名護学院の生活介護支援事業所「とらいあんぐる」は昨年12月に新規受け入れを休止した。かつて2人だった看護師も、現在は1人。気管切開によるたんの吸引や酸素療法、チューブで胃や腸に栄養剤を投与する医療的ケアに追われる。

■「常に人が足りない」ため息
同所で働く50代の女性看護師は「作業中でも、次はあれもこれもしなきゃと頭がいっぱい。常に人が足りない」とため息をつく。
職員は、利用者のケアだけでなく、自宅との送迎も担う。名護市内や今帰仁村、本部町、かつては国頭村にも車で出向いていた。入浴など、複数人で行う介護もある。
関連記事睡眠2時間、ケアは24時間体制…経営者は病の1歳児を育てるシングルマザー おしゃれ雑貨・・・ 樹齢100年を超えるリュウキュウマツが店先にそびえる雑貨屋「mrch(マーチ)」(那覇市)。2年前に・・・www.okinawatimes.co.jp 事業所の管理者は、いま以上に利用者が増えた場合「すでに事業所を利用している人に、安定した介護ができなくなる恐れがある」と指摘する。
医療の発展により、医療的ケア児・者の数は、年々増加傾向にある。管理者は「人材が確保でき次第、早急に新規受け入れを再開したい」と強調した。
◇ ◇
■県は実態を把握せず
県によると、医療的ケア者を見る生活介護事業所は沖縄県内全体で21カ所(2022年4月1日時点)。うち、本島北部は廃止や休止した2事業所を含めて、計4カ所にとどまる。
一方、県は、事業所が現在も利用者の受け入れが可能かどうかについて「把握していない」という。事業所に対して人材の供給や十分な助成を行うためにも、行政には正確な実態の把握が求められている。
(北部報道部・玉城日向子)