【プチ鹿島の本音】岸田首相の「実質負担ゼロ」は深刻

皆さんは「カロリーゼロ理論」をご存じでしょうか。サンドウィッチマンの伊達みきおさんが「提唱」していて、たとえば「カステラはギュッって潰して小さくすればカロリーゼロ」とか「ドーナツは中心が空洞なのでカロリーゼロ」というもの。聞いている人は思わず笑ってしまう。真面目に言えば言うほど面白いからです。
さて先日、国会では岸田首相が「カロリーゼロ理論」みたいなことを真面目に言っていました。少子化対策の財源確保として「子ども・子育て支援金」を近く創設し、試算では国民1人当たり月500円弱を徴取するという。しかし首相は「実質負担ゼロ」と言っていたのだ。え、どういう意味?
その理由は2つあり、「社会保険料の負担抑制」と「賃上げで所得を増やす」ことで国民所得全体における負担率を増やさないという理屈らしい。読売新聞には「苦しい説明」と書かれていた(2月17日)。社会保険料の負担抑制の内容や効果が具体的に分からないし、賃上げがどこまで実現するか現時点では不透明だからだ。そりゃそうだ。
では、なぜこんなことを言い出したのか。
「首相は昨年1月に『次元の異なる少子化対策』を掲げた当初から、国民の負担増を前面に出すことには否定的だったとされる。22年末に防衛力の抜本的な強化に伴う増税を打ち出したことが世論の反発を招いたためとみられる」(読売・同)。
つまり首相は正面から議論することを避けているのだ。嫌われたくないのかもしれないが、堂々と議論しない振る舞いこそが不信を生むのに。「カロリーゼロ理論」は真剣に言えば言うほど面白いが、岸田首相の「実質負担ゼロ」は真顔で言ってるから深刻さしか感じない。このゼロ理論はネタを練り直したほうがよいと思います。(時事芸人)