「“頂き女子”みたいな感じです」保育園の運営資金が“ロマンス詐欺”に…2億5000万円以上横領の男が法廷で激白

「“頂き女子”みたいな感じです」「女は海外の詐欺グループの手下でした」自身が理事長を務めていた法人の金を2億5000万円余り横領した罪に問われた男は、「マッチングアプリで知り合った女から詐欺被害に遭った」と、法廷で横領した金の使い道を赤裸々に語りました。
起訴状などによりますと、愛知県瀬戸市の社会福祉法人元理事長・森田正明被告64歳は、2023年7月から8月にかけ、法人が運営する保育園の口座から現金合わせて2億5100万円を横領した罪に問われています。
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2024年1月の初公判で、森田被告は「間違いありません」と起訴内容を認めていました。検察側は冒頭陳述で、「数年前からマッチングアプリに登録し、複数の女性と知り合い、交際などをするようになっていた。自身の正規の収入だけでは交際費などを捻出できず、遅くとも2023年2月ごろから法人資金の私的流用を繰り返していた」と指摘していました。
3月12日、「よろしくお願いします」と一礼して証言台に立った森田被告。名古屋地裁で開かれた裁判では、被告人質問が行われました。
(弁護側)「2023年2月ごろから横領していた?」(森田被告)「マッチングアプリで知り合った女性に対する費用で。ちょっと特殊でして…“頂き女子”みたいな感じ。生活が苦しいとか費用が要ると言われて、ちょこちょこ貸し出していた」(弁護側)「(法人の金に手をつけるのは)悪いことだと認識はあった?」(森田被告)「ありました」(弁護側)「なぜやったのですか?」(森田被告)「なぜと言われても…必要があったのでやった。バレなければいい、のちほど返してわからないようにしようと思っていた」
しかし、森田被告が法人にバレずに返済することはできませんでした。2023年7月、マッチングアプリで、名古屋市瑞穂区に住む「あいな」という女性と知り合ったことがきっかけです。
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(森田被告)「あいなとは知り合ってすぐにLINEに移行し、毎日LINEしていた。その中で、TikTokでオンラインショップを開くことを勧められた。『今だけ特別に無料だから開設だけしたら』と誘導され、向こうの言いなりで開設してしまったという状況でした」
最初は、「こんなあやふやな仕組みで売買できるのか?」と疑っていたという森田被告。しかし、開設翌日に注文が来て、その売り上げが引き出せたことから「商売が成り立つ」と感じたといいます。
(弁護側)「そのあとはどうなりましたか?」(森田被告)「ショップのグレードアップを持ちかけられました。800万円を入れるとすぐに1600万円になると。“抽選だから”と言われてとりあえず申し込んだら、直後に『当選ですよ。48時間以内に800万振り込んで』と言われた」「800万円は手持ちになかったので、法人の金に手をつけた。法人の金は全て1人で動かせてしまった。銀行に行ったり、インターネットバンキングで、不幸にも動かせたという条件が重なった」
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一時的な流用のつもりで、800万円を法人の金から振り込んだ森田被告。しかし、増えたはずの1600万円を引き出そうとすると「税金として1000万円支払わないと出金できない」「トラブルの回収で8000万円」などと理由をつけて、さらに金を要求されました。
(森田被告)「言う通りにしないと金が返ってこないと、切羽詰まって振り込みをしてしまいました。(途中で)法人の金も限界で、親族などから借りまくった」
2023年8月14日、運営保証金として3000万円を振り込むように要求されたが、どうしても金を用意できず、弁護士に連絡。そこで「詐欺」だと告げられました。しかし、それまでの1か月弱で支払った総額は、法人の金2億5100万円を含め、約3億4000万円に上っていました。
(弁護側)「おかしいとは思わなかった?」(森田被告)「詐欺グループが巧妙すぎて…私が金を出すタイプの人間だと見抜いて、『これで無理でもこうしたらできる』と言って金を引き出させた」(検察側)「根底には結局、“あいな”に言われるがままにしておけば、会えるというのがあったのでは?」(森田被告)「瑞穂区なら会いに行けるなと思っていた。お金よりそちらが目的だったと正直に言っておきます」
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「金を取り戻そうとして法人の金から振り込みを続けた」と弁明する森田被告に、裁判官からも厳しく質問が飛びました。
(裁判官)「詐欺に遭って、あなたのお金にとどまらず、法人のお金に手をつけたのはなぜですか?」(森田被告)「良くないことですが、やむなく手を出してしまった。私が操作できるものですから、とにかく出金して売り上げを戻したいと。してはいけないことですが、やれてしまう環境にあり、やってしまった」(裁判官)「一歩踏み越えたのは何なのか、考えを深めてもらわないと。また同じことにならないように、考えてもらった方が良いが、今はそこは分からない?」(森田被告)「述べようがないです。やってはいけないとの倫理観が薄かった。必死になって、マインドコントロールされて、視野狭窄に陥っていたのかな」(裁判官)「考えが甘かったと理解はしている?」(森田被告)「はい、あきらかにおかしなこと。おかしな話です」
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検察側は「“あいな”の歓心を買おうという動機は身勝手で自己中心的。被害額も極めて多額」として、森田被告に懲役7年6か月を求刑。一方、弁護側は「森田被告は何ら利益を得ておらず、被告人自身も被害者である」としたうえ、「自宅を売却するなどして2600万円を返済したほか、年金収入から月々3万円を返済すると約束し、法人と示談が成立している」などとして、執行猶予付きの判決を求めました。
森田被告は今後について、「社会復帰できたら介護施設で働いて、一生かかっても払い切れない額だが、少しでも返済したい」と話したほか、「こういうケースが危ないといった詐欺の事例を含めて、被害に遭った人と情報共有して、詐欺被害を広げたくない」「海外の詐欺グループだと捜査の手が及ばないというが、泣き寝入りはおかしな話なので、啓発をしたい」などと語りました。
判決は、4月23日に言い渡されます。