宇宙事業会社スペースワン(東京)は13日午前11時過ぎ、和歌山県串本町の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」から小型ロケット「カイロス」1号機を打ち上げたが、搭載していた衛星の軌道投入ができず、発射5秒後に爆発した。同社は同日午後に記者会見を開き、ロケットに搭載したコンピューター自体の判断で自律破壊を行ったと明らかにした。民間単独企業では日本初の人工衛星の軌道投入を目指したが、日本初の民間発射場からの打ち上げは失敗に終わった。
発射された「カイロス」は、2秒後に傾き、5秒後にはドンという轟音(ごうおん)とともに空中で爆発した。立ち上る白煙。燃えさかる破片は周辺の森などに飛び散った。
「打ち上げ失敗」。地元・串本町の発射台近くの見学会場にアナウンスが流れると、詰めかけた人々からは悲鳴が上がった。
カイロスは、スペースワンが造った全長18メートルのロケット。政府が11億円を投じて開発した、100キロの小型人工衛星が乗せられていた。この衛星を発射後約50分で地球周回軌道に投入する計画で、成功すれば民間単独企業として国内初の偉業となるはずだった。日本初の民間発射場からの打ち上げ、2019年の“ホリエモンロケット”以来のロケット宇宙到達もご破算に。
同社は豊田正和社長をトップとする対策本部を設置。豊田社長はこの日午後、串本町近くの那智勝浦町のホテルで開かれた記者会見で「期待に十分お応えができず、深くおわびする」と頭を下げた。
打ち上げは、発射の130秒後に1段目を切り離すなど、3段の固体燃料の切り離しを経て、約50分後には搭載の小型衛星を分離する計画だった。何らかのトラブルが発生したとみられるが、自律破壊の理由について豊田社長は「(ロケットが)ミッションの達成が困難と判断した」との言及にとどまった。その後も「調査中」「申し上げられない」と繰り返した。
一方で「われわれは失敗という言葉は使わない。新しいデータ、経験があり、それは新しい挑戦の糧になる」と強気の姿勢を崩さなかった。次の打ち上げは未定としながら「スピード感を持ってミッションを達成していきたい」と30年代に年間30機打ち上げの目標は堅持する。
同社は低コストかつ高頻度で衛星を宇宙へ届ける「宇宙宅配便ビジネス」を目指している。初号機は21年に打ち上げる計画だったが、コロナ禍などで部品の調達が遅れて計4回延期。今回も当初は9日発射の予定だったが、船舶が禁止区域に入っていたため延期になっていた。