[社説]沖縄に津波警報 「車避難」の課題 検証を

東日本大震災以来の津波警報に、県内は朝から緊迫感に包まれた。
日本時間の3日午前9時前、台湾東部沖を震源とするマグニチュード(M)7・7の地震が発生した。震源に近い花蓮では震度6強、与那国島では震度4を観測した。
台湾は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートが衝突する位置にあり、ひずみが大きい場所で地震が起きた可能性がある。
与那国島と宮古島で最大30センチ、石垣島で20センチの津波が観測された。
沖縄本島地方、宮古・八重山地方に津波警報が発令され、多くの人が高台へ、沿岸部からより遠い場所へと車や徒歩で避難した。
県内に津波警報が発表されるのは2011年3月11日の東日本大震災以来である。
住民は自主的に高台にある公園や高い建物、避難場所に移動し、大きな混乱はなかった。私たちは津波の怖さを大震災で知っている。教訓が生かされたといえる。
四方を海に囲まれた沖縄では、津波への危機意識をより強く持たねばらない。
1771年に先島諸島を襲った「明和の大津波」では、海抜30メートルの高さまで津波が駆け上がり、約1万2千人が溺れ死んだといわれる。
政府の地震調査委員会によると、南西諸島周辺でM8級の巨大地震が起きる可能性があり、与那国島周辺では30年以内にM7級が起きる確率が90%を超えるという。
災害時の事業継続計画(BCP)があった病院や銀行は患者や顧客をスムーズに避難させることができた。平時からの備えの重要性が改めて浮き彫りになった。
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今回浮かび上がったのが車社会の問題である。
宮古島では海抜の高い公園に千人を超えるとみられる住民が避難し駐車場が満車になった。隣接する片側1車線の道路に路上駐車せざるを得ない状況になり、1時間近く車が通行できなくなった。
県警に正午までに寄せられた110番通報42件のうち、大半が「渋滞で車が動かせない」というものだった。
近くに高い建物がない地域や高齢者にとって車は大事な移動手段であるが、車で移動する人が多ければたちまち渋滞が発生する。大震災では渋滞で逃げ遅れた例がある。
沖縄本島中南部は住宅が密集していて、片側1車線の道路も多い。平時でも渋滞による時間損失などが指摘されるが、非常時には大勢の命に関わる問題に発展する。
課題を検証し、災害に強い交通環境の整備や車避難のルールづくりに取り組む必要がある。
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台湾の被害は甚大だ。強い揺れで市街地の建物が倒壊し、住民が閉じ込められた。午後10時現在、9人の死亡が確認されている。
1週間程度は同規模の地震が発生する恐れがあり、警戒が必要だ。
与那国島と台湾の距離はわずか約110キロ。人の交流も盛んで、沖縄と台湾は「きょうだい」のような関係を築いてきた。台湾に心を寄せ、できる限りの支援をしたい。