[社説]ガザ戦闘半年 国際世論喚起し停戦を

イスラエル軍とイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザで戦闘を始めてから7日で半年を迎えた。
この半年の間に、ガザ市民を取り巻く環境は極端に悪化した。住居、水、食料、保健衛生など、あらゆる面で絶望的な状況に追い込まれ、生きる支えすら失われつつあるという。
国連と世界銀行の報告書によると、戦闘が始まってから今年1月までに、医療施設の84%、主要道路の92%が破壊された。
ガザの死者はついに3万3千人を超えた。犠牲者の多くは、保護されるべき子どもたちや民間人である。国連職員やNGO(非政府組織)の巻き添え犠牲も相次いでいる。
砲爆撃だけではない。ガザの人口約220万人の半数が「壊滅的な食料不足」に直面する恐れがあるという。
もはやガザの状況は「ジェノサイド(民族大量虐殺)の域に達した」。国連人権理事会から任命された特別報告者は、報告書でそう警告した。
イスラエルの強硬姿勢に対する反発は世界各地に広がっている。後ろ盾のバイデン米政権はネタニヤフ政権に対する圧力を強めつつある。
イスラエルではハマスとの即時交渉妥結を求める大規模デモが行われた。
状況は確かに変わった。だが、イスラエルは依然としてガザ南部ラファへの地上侵攻の構えを崩しておらず、戦闘終結は見えない。
どうすれば一日も早くおぞましい現実に終止符を打つことができるか。その鍵を握っているのは米国である。
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国連が一貫して国連憲章と国際人道法の立場から人道的停戦を求めてきたのに対し、欧米とりわけ米国の立場はあいまいだ。
イスラエルの「自衛権」を重視する米国は国連の安全保障理事会で4回、拒否権を行使した。停戦が実現できないのはそのためだ。
3月25日の安保理では、米国が棄権したことで、ラマダン(断食月)中の即時停戦を求める決議案が採択された。
こうした姿勢の一方で、バイデン政権はイスラエルに対し、重量2千ポンド(約900キロ)級のMK84爆弾などの武器の追加供与を承認したとされる。
MK84爆弾は殺傷力が強く、人口密集地で使用すれば民間人の犠牲は避け難い。
バイデン大統領はネタニヤフ首相に注文を付ける一方、その裏で武器供与を続けていることになる。典型的な「ダブル・スタンダード(二重基準)」である。
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ネタニヤフ政権は民間人の犠牲を「やむを得ない付随的損害」と見なす傾向が強い。
ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃や人質連行は非難されなければならないが、だからといって何の罪もない子どもやその家族までが無差別に殺されていいわけがない。
イスラエルは「自衛権」の正当性を主張するが、ガザ市民の生きる権利や人間としての尊厳は誰が守るのか。
国連や国際社会がその役割を担わなければ、国際規範は崩壊する。今、私たちはその瀬戸際にある。