ライドシェアの現状と課題 16年から導入の京都・丹後町 高齢者「羽が生えた」一方で事故の不安も

一般ドライバーが自家用車を使って有償で送迎する「ライドシェア」が8日に都内や京都府の一部で開始された。観光地での移動手段不足の解消に期待が持たれる中、一方で人口が少なく、交通網もぜい弱な一部の地域で、ライドシェアに準ずる取り組みがすでに行われている。2016年に仕組みを導入した京都府京丹後市丹後町の関係者に、現状と、都市部にも共通する今後の課題を聞いた。(坂口 愛澄)
「『タクシーが欲しい』との要望が多く、ようやくサービスが実現しました。利用者の割合は60~80代の方がほとんどです」。NPO法人「気張る! ふるさと丹後町」の専務理事・東恒好さんは他の自治体に先駆け、試験的にライドシェアの仕組みを取り入れ、成果を上げている。
丹後町は、京丹後市の中心部から最も離れている。貴重な交通手段となっていたタクシーは、運転手不足などを理由に2008年に全て撤退し、バスは1時間に約2本と数が少ない。
ライドシェアは、口コミなどで浸透し「年間約1100回ほど利用してもらっている」(東さん)。利用客からは「羽が生えたように移動できるようになったのがうれしい」(70代女性)といった感謝の声が相次いでいる。
ドライバー4年目の永島政彦さんは、「仕事の空き時間でお客さまを送ることができるし、何より町の役に立てればという思いがあった」と話す。利用客は病院への通院目的が多く、片道30キロほど運転することもある。
都内でのライドシェアの運賃はタクシーと同水準だが、丹後町の場合は試験的導入のため、料金はタクシーの半額程度。乗車料金の半分以上がドライバーの収益となるが、ガソリン代、整備代なども必要で、現状はボランティアに近い。東さんは「制度を持続していくならば、運賃設定や報酬をどのようにするかも議論していかなければならない」との考えも示した。
取り組みを開始して約8年、他にも課題はある。東さんは「丹後町内から京丹後市に送ることはできますが、(タクシー業者の収益にも関わるため)業者の反対があり、町外へ丹後町からお迎えにいくことはできない」と頭を抱えている。
京都市内のタクシー業者を取材すると、反対意見も多く、60代のタクシードライバーは「一般人がお客さまを乗せて運転することはかなり危険を伴う。事故が多発したらどう対処するのだろうか」と不安視していた。
来月までに都市部12地域
「日本版ライドシェア」は、タクシー会社の管理のもと、自家用車や一般ドライバーにより有料で輸送サービスを提供する。対象は12地域で、8日に東京と京都の一部地域で開始。4月中に神奈川や愛知、5月には大阪、兵庫など8道府県で始まる。
利用に必要なのは「GO」「ウーバー」などの配車アプリ。車を予約し、目的地と運賃を事前に確定したうえで移動する。運賃はタクシーと同水準。支払いはアプリを通じたキャッシュレス決済となる。
ライドシェアができるのは、タクシー車両が足りないと国交省が判断した曜日と時間帯。都内だと▼月~木曜日は午前7時~午前10時台▼金曜日は午前7時~午前10時台、午後4時~午後7時台▼土曜日は、午前0時~午前4時台、午後4時~午後7時台▼日曜日は午前10時~午後1時台となる。