[社説]令和書籍の歴史教科書 沖縄戦の実相が見えぬ

文部科学省は、来春から中学校で使用される教科書の検定で「令和書籍」の歴史教科書2点を追加合格にした。2018年度から、これまで3回不合格となっていた。
文科省は3月に検定結果を公表していた。
令和書籍を巡っては、関係者が申請前に動画投稿サイトのユーチューブで、申請の予定があるといった趣旨を発言したことから、合否を保留していた経緯がある。
教科書では、沖縄戦の学徒隊について「志願というかたちで学徒隊に編入」と記述している。
学徒隊は劣勢にあった日本軍の人員補充の一環だった。兵役法で定めのなかった14歳以上17歳未満は戸主や親権者の承諾を得て、本人が志願すれば防衛召集の対象とした。
実際には、生徒たちに十分な説明はなく、「志願」や「承諾」といった手続きが取られない場合もあった。
証言などから、親の承諾や志願があったことも少なくない。一方で、召集令状を渡され、強制的に戦場へ駆り出されたケースもあった。
「志願」は、当時の皇民化教育や軍国主義、軍の絶対的な存在が背景にあったことを無視した一面的な見方であり、誤解を与える。
また「沖縄を守るために、爆弾を持ったまま敵艦に突入する特攻作戦も行われ、二八〇〇人以上の特攻隊員が散華しました」との記載もある。
「沖縄を守るため」や「散華しました」という表現には戦争を美化する狙いがあるのではないか。
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令和書籍は編集の趣意書で「天皇を軸として語ることで歴史の連続性をより実感できるよう工夫した」と説明し、従軍慰安婦や領土問題でも保守色が前面に出ている。
沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」については「逃げ場を失って自決した民間人もいました」と記述するだけで、日本軍による関与や強制性などは読み取れない。
今回の検定では、自由社の教科書が昨年に引き続き、沖縄戦で「日本軍はよく戦い、沖縄住民もよく協力しました」と、県民が進んで協力したかのような記述になった。住民虐殺など日本軍の加害性には触れていない。
共通するのは「殉国美談」である。
かつての戦争を肯定的に捉えるだけでは、真実は伝わらない。
体験者が懸命に語ってきた言葉をよりいっそう学び、引き継ぐ必要がある。
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令和書籍の2冊を加え、中学歴史教科書の合格は10冊。検定意見526件のうち、追加合格の2冊で計210件と、全体の4割強を占めた。
多かったのは「生徒が誤解するおそれのある表現」などだ。修正後も、製作者の意図が強く表れるような記述が残り、危機感を持つ。
沖縄戦の特徴は、日本軍兵士よりも多い住民の犠牲である。なぜそうした事態が起きたのか、二度と惨禍を繰り返さないためにどうすればいいのか。歴史を学ぶ意味はそこにこそある。
教科書で実相をゆがめることがあってはならない。