きょう5月1日はメーデーである。「労働者の祭典」として、世界各地で働く人々が手を取り合い、労働環境の改善や地位向上を訴える。県民の暮らしを見れば、食品や日用品の値上がりが家計を直撃し、人手不足が常態化している。物価の上昇に見合った所得の向上と働き方改革は待ったなしである。庶民の暮らしが最優先であることを刻み直す一日としたい。
連合のメーデー中央大会は、ゴールデンウイーク初日の開催が恒例となり、今年は4月27日、都内に2万8千人余りが集まった。春闘で実現した歴史的な賃上げ水準を中小企業にも波及させることなどを盛り込み、宣言を採択した。
財務省の調査によると、賃上げ率が5%以上に届いた中堅・中小企業の割合は24・4%にとどまり、53・8%に達した大企業との格差が鮮明になった。人件費を価格に転嫁できていない中堅・中小企業も50・2%に上り、賃上げの原資を確保することに苦慮している現状も浮き彫りになった。
県内の企業は9割以上が中小である。一部の大手では、基本給を底上げするベースアップを含めた全国並みの賃上げが実現している一方で、原材料費の高騰を価格に転嫁できずにいる事業主は決して少なくない。
所得が向上し、消費が増えなければ企業の収益は上がらない。格差の拡大があってはならない。大手のみならず、下請けや孫請けまでが賃上げを実現できる経済の循環が求められている。
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働き方を巡る問題も課題含みだ。今年4月から時間外労働(残業)の上限規制が建設業、自動車運転業、医師の他、沖縄と鹿児島の両県では製糖業にも導入された。長時間労働が常態化している業種で過労を防ぐ狙いだが、人手不足が暮らしに影響を与える「2024年問題」への対応が迫られている。
教職員の長時間労働も慢性化している。文部科学省によると、22年度に残業時間が上限の月45時間を超えている教員は小学校で64・5%、中学校で77・1%に上った。
県教育庁は本年度から取り組む3年間の働き方改革推進計画で、時間外勤務については「月45時間、年360時間超の年平均割合を23年度より半減」することに取り組む。教職員が「働きがい」「心身の健康」を十分に実感できる環境を目指すとしており、教員のなり手不足解消の一助としても期待される。
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2月の毎月勤労統計調査で実質賃金は23カ月連続で減少し、リーマン・ショックの景気低迷期に並んで過去最長となった。名目賃金は26カ月連続のプラスだったが、物価の高騰に追い付いていない。
こうした中、春闘の賃上げを台無しにしかねないのが円安だ。岸田文雄首相は連合の中央大会で「今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現する」と語ったが、円安が加速し続ければ中小への波及は失速しかねない。メーデーで述べた「宣言」である。岸田首相には、あらゆる施策で約束を果たす重い責任がある。