ウクライナは歴史的に旧ソ連の兵器を使っていますが、アメリカで行われた戦略国際問題研究所(CSIS)の年次フォーラムにて、極めて短期間にウクライナ側が西側兵器を使えた理由が明らかになりました。
2024年4月24日、アメリカで行われた戦略国際問題研究所(CSIS)の年次フォーラムで、ウクライナ空軍が、かなり速い期間で供与を受けた西側兵器を使えるようになった理由が明らかとなりました。
ウクライナ軍が西側兵器をすぐに旧ソ連機で使えた理由判明!? …の画像はこちら >>ウクライナ空軍のSu-27(画像:ウクライナ空軍)。
このフォーラムで、ウィリアム・ラプランテ国防次官は、供与した西側兵器の一部がウクライナ空軍の保有する旧ソ連機のコックピットにあるタブレットにより制御されていると明かしました。同軍が急速に新たな能力を獲得したのは、ここに理由があるそうです。なお、タブレットは基本的にiPadのようです。
この話を裏付ける証拠として、ウクライナ空軍第831戦術航空旅団が2024年2月19日にFacebookで公開したSu-27のコックピット動画があります。
同航空旅団の動画では、Su-27に乗るパイロットが、アメリカの供与したAGM-88対レーダーミサイル(HARM)と思われるミサイルを発射していますが、コックピット正面に改造して設置されたと思われるタブレットがあり、航空地図や識別情報などを表示されていました。
後にこの動画は、明るく画像処理され、SNSを通じ軍事ブロガーなどの間で拡散。西側兵器の制御にタブレットが使われている可能性があることが話題となっていました。なお、HARMが供与されたばかりの2022年8月にも、ウクライナ空軍の公式X(旧:Twitter)で発信されたMiG-29でのHARMの発射映像のなかで、コックピットの中央部に横向きで置かれたタブレットが確認されていました。
ラプランテ国防次官によると、このiPadによる火器管制はSu-27のほかMiG-29でも使っていると明かしており、これまで公開された動画で、示唆されていたタブレットの役割が確定的になりました。また、HARMのほかにも西側から供与された複数の兵器がタブレットによる操作で使用できるとのことです。
使用できる兵器についてラプランテ国防次官は詳細を明らかにはしませんでしたが、アメリカのミリタリー系メディア「The War Zone」によると、座標が分かっている目標に対し、タブレットに搭載したGPSナビゲーションを使用し攻撃が行われているとみられているそうです。HARMのほかにはアメリカが供与した無誘導爆弾に精密誘導能力を付加する装置である「JDAM(ジェイダム)」、さらに、フランスから供与された、通常爆弾を精密誘導弾とするモジュールであるAASMなどが、このiPadを使った火器管制システムで使用できる可能性が高いようです。
また、アメリカジェイダムの、フランスのAASMと同じような機能を持つ「ペイブウェイIV」もイギリスから供与開始が予定されており、さらにiPadの使用機会は広がる可能性があります。
実は、タブレットに関しては、この戦闘機の火器管制以外にも、ウクライナの戦場ではドローンの制御のほかあらゆる場面で使われています。ほかにも、アメリカ陸軍では、無人航空機であるMQ-1C「グレイ・イーグルER」に、オペレーターを介さず地上で兵士がタブレットで地上から火力支援を行うことができるシステムなどを開発しており、戦場でもタブレットは欠かせない存在となりつつあります。