台風1号発生が遅い理由 エルニーニョ現象最盛期の後の特徴 でも過去には甚大な災害

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例年ではゴールデンウイークまでに、台風が1個以上発生していることが多くあります。ところが、今年はまだ発生していません。台風が発生しにくい状況は、エルニーニョ現象が最盛期を迎えた翌年に見られる特徴です。2016年は台風1号の発生が、7月になってからでした。ただ、この年、台風の年間の発生数は平年を上回ったばかりか、台風などによる甚大な災害が発生しています。
今年はまだ台風の発生なし
例年ではゴールデンウイークまでに、台風が1個以上発生していることが多くあります。ところが、今年はまだ発生していません。今日4日の雲の様子をみると、小笠原諸島近海にまとまった雲がみられ、6日までに、南鳥島近海で低気圧が発生する予想です。ただ、近々、台風になることはないでしょう。
台風が発生しにくい理由 エルニーニョ現象最盛期の後インド洋の水温高く

昨年2023年春から続いているエルニーニョ現象は、今年2024年に入ってピークを過ぎ、春の間に終息する可能性が高くなっています。エルニーニョ現象が最盛期を迎えた翌年には、インド洋の海面水温が高くなります。これは、エルニーニョ現象が終わっても、1~2シーズン続くことが知られています。今回は、インド洋の海面水温が平年より高い状態が2月にピークになり、この春も高い状態です。これが、台風が発生しにくい理由のひとつです。メカニズムをみてみると、インド洋の海面水温が高いと、そこで積乱雲が発生しやすくなります。インド洋で積乱雲の発生が多いと、そこから気圧が低いエリアが東へ広がります。この気圧が低いエリアに風が吹き込むことで、フィリピン付近では高気圧の勢力が強まります。このため、台風の発生場所として知られるフィリピンの東などでは対流活動が不活発になり、台風が発生しにくくなります。
今後の傾向は?

今後もインド洋の海面水温が平年より高い状態が続き、7月にかけて、フィリピン付近で高気圧の勢力が強いでしょう。ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の季節予報によると、日本の南では、台風など熱帯擾乱の発生は平年に比べて少ない予想です。ただ、これは傾向で、今年も台風に注意が必要なことには変わりありません。フィリピン付近で高気圧の勢力が強いと必ずしも台風が発生しないということではなく、高気圧の勢力が強いがために日射により海面が暖められるなどの影響で、熱帯擾乱が発生することも考えられます。
2016年は7月に台風1号 それでも年間発生数は平年を上回り甚大な災害

2016年は、エルニーニョ現象が最盛期を迎えた翌年です。この年の台風1号の発生は、7月になってからでした。この年は、台風1号の発生が遅くても、台風シーズンである7月、8月、9月に、いずれも平年を上回る数の台風が発生し、年間を通しての発生数は26個と、平年の25.1個を上回りました。そればかりか、この年、8月中旬から下旬にかけて、北海道地方、東北地方、関東地方に台風が相次いで上陸し、大きな災害をもたらしました。8月の上陸数は4個で、ひと月の上陸数としては、統計開始以来、1954年9月、1962年8月と並んで最多タイになりました(台風の統計開始は1951年)。この年の台風7号、11号、9号は、北海道に上陸。北海道地方に年間に2個、再上陸を含めて3個の台風が上陸したのは、ともに統計開始以来、初めのことでした。台風10号は、岩手県に上陸。東北地方の太平洋側への上陸は統計開始以来、初めてのことでした。これらの台風及び前線などによる大雨で、岩手県で15名の死者がでるなど、人的被害が生じたほか、住家被害、ライフライン、公共施設、農地などへの被害及び交通への影響が発生しました。