「偽パトカー」のドライバー“逮捕” どこまで似せていいのか? かなり悪質「交差点に進入します」

福岡市内で覆面パトカーを装った車両が事故を起こし、運転者が逮捕されました。パトカーに似た車両を保有するのは違反なのでしょうか。ドラマや映画で使われる劇用車のスタンスはどうなっているのでしょうか。
覆面パトカーを装った自家用車で衝突事故を起こし、4人を負傷させたとして20代の会社員2人が2024年5月8日、逮捕されました。
事故は、3か月ほど前の2月中旬に福岡市の中心部、天神の交差点で起きました。クルマに取り付けたサイレンを鳴らしながら赤色回転灯を点灯させて、覆面パトカーの緊急走行のごとく交差点へと進入、そこでタクシーとぶつかり、運転手と乗客3人にケガを負わせたというものです。
報道によると、パトカーを装ったクルマは事故の直前、マイクで「交差点に進入します」などといった呼びかけも周囲に行っていたとのことでした。
事故を起こしたことは論外ですが、そもそもパトカーに似たクルマを所有したり走らせたりすることは、違法なのでしょうか。
「偽パトカー」のドライバー“逮捕” どこまで似せていいのか?…の画像はこちら >>トヨタ「クラウン」の覆面パトカー(乗りものニュース編集部撮影)。
ドラマや映画などを見ていると、警察車両によく似た外観を持つ車両が多数登場しています。これらは「劇用車」と呼ばれるもので、パトカーそっくりの見た目をしていますが、このような車両を撮影所などの敷地内で走らすことは全く問題ありません。 そのため、私有地で楽しむ分には、白黒のパトカー同然だろうが、それこそ覆面パトカーそっくりであろうが、違法にならないと言えるでしょう。 では、どういうときに法律に抵触するのかというと、公道に出た際です。 そもそも、赤色灯は緊急自動車以外に設置することは法律で許されていません。しかも緊急自動車を所有できる対象は、公共性や公益性の高い組織・業種に限定されています。そのため、警備会社などが所有する車両であっても赤色灯を取り付けて緊急自動車として走らせることはできません。
ゆえに、劇用車が撮影場所までの移動などで公道を走る場合は、赤色灯にカバーをかけ、「警視庁」や「○○警察」「POLICE」といった表示は取り外すか覆って見えなくしています。さらに車体の目立つ場所に「撮影用車両」などといった文言を掲示し、本物ではないと周囲からわかるようにもしています。
また、緊急自動車以外が公道でサイレンを鳴らすことは、公安委員会が定めた遵守事項の違反になるので、こちらも許されません。
では、ボディを白黒のツートンにするのはどうなのでしょうか。
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スズキ「ジムニー」の防犯パトロールパトカー。この車両は自主防犯活動団体が用いるもので、青色回転灯は地方自治体もしくは都道府県警察などから認可を受けた場合に載せることが可能である(乗りものニュース編集部撮影)。
結論から言うと、クルマを白黒に塗装しただけなら罰せられることはありません。なので、マンガやアニメで有名になった、いわゆる「パンダトレノ」と呼ばれるトヨタAE86の白黒ツートンのようにカラーリングすることも何ら問題なく、警備会社の車両にも白黒ツートンのものが存在します。 あくまでも赤色灯を載せ、それが見える状態を維持していたり、「○○警察」や「POLICE」といった文言を車体に明示して公道を走ったりするのが問題になるのです。 警察庁によると、事案ごとの判断にはなるものの、都道府県警察の名前を記載した車両を用い、警察官を詐称するなどした場合は、それだけで軽犯罪法違反となる可能性があるということでした。
なお、2020年10月のハロウィンでは、クルマも仮装させたのか、札幌市内でパトカーに似た車両が走り回り、SNSなどで話題になりました。このときの「ニセパトカー」は、赤色灯が付けられ側面には「北海道警察」と書かれていたとのことなので、これが法令違反になり、警察の捜査となった模様です。
今回、福岡市で事故を起こした覆面パトカーを装った車両が行った、サイレンを鳴らし赤色灯を点けて赤信号の交差点へと進入、さらにマイクを使って警察車両であるかのように振る舞ったことは悪質だと言えるでしょう。そのうえで、タクシーの運転手や乗客にケガを負わせたのですから、運転手らが自尊心を満たすために行った行為の代償は極めて大きくついたと言えるのかもしれません。