東京湾の三番瀬人工干潟に疑問の声 市民団体「海に触れる場は既にある」 市川市が計画

市川市が東京湾の三番瀬に計画する人工干潟整備について、長年環境保全活動に取り組んできた市民団体が疑問の声を上げている。「三番瀬は現在の浅海域のままが望ましい。人工干潟造成は近年県が調査したが断念した」と指摘し、計画見直しを求める要望書を市に提出した。市は人工干潟の整備理由を「市民が直接海に触れられる場をつくる」と説明。これに対し、市民団体は「海と触れ合える場所は市内に既にある」と主張し、その場所として挙げる江戸川放水路河口の干潟で12日に見学会を開く。
市が昨年8月に発表した干潟造成計画は、塩浜三番瀬公園護岸前面の海域に大量の砂を入れ、干潮時には「幅100メートル、奥行き50メートル」の干潟が出現するよう整備する。この干潟で、市民らが海に親しめるようにする構想。砂が流出しないよう、金網に自然石を入れたかごを周囲に設置する。
本年度は水質や生物などのモニタリング調査を行い、2025年度から海のしゅんせつ工事で出た砂を投入、砂の定着効果などを検証する。問題がなければ29年度の完成を目指す。
この計画に対し、市民団体「市川緑の市民フォーラム」が今年3月、別の市民団体と共同で計画見直しを求める要望書を市に提出。その理由の一つは、10~12年に県が同じ場所で干潟造成が可能か調べた結果、最終的に断念したことだった。
県によると、実際に砂を入れて砂や生き物の定着具合を調べた。得たデータを基に工法の異なる8案(市の工法は含まない)を検討した報告書を14年度に作ったが「砂を投入しても流され、流出防止に囲いを作ると生き物が定着しない」(県環境政策課政策室)と最終的に整備を断念した。
同フォーラムの佐野郷美事務局長(東邦大学理学部非常勤講師)は「干潟のなかった場所に砂を入れて実際に定着するか、生物が住み続けるかは疑わしい」と、市の計画を疑問視する。
田中甲市長は4月18日の定例記者会見で「私は『手を加えることで自然環境を破壊から守る』との考え方。現段階では変わらない」と計画通り進める考えを表明した。
同フォーラムが「海と触れ合える場所」に挙げた江戸川放水路の干潟は、三番瀬とつながる海域にあり、潮干狩りも盛ん。ただ、同放水路干潟の周辺に一般向けのトイレや駐車場、休憩所はない。同フォーラムは、同放水路干潟周辺でのこうした施設整備に限った「干潟公園化」を市に提案。三番瀬の人工干潟計画の「対案」と位置付ける。
12日の見学会は同フォーラムが主催し、生き物を観察する。「干潟を新たに作らなくても既に三番瀬の近くにあるのを知ってほしい」と佐野事務局長。見学会は正午に、東西線妙典駅改札口前に集合。参加費300円(資料代)。長靴か濡れていい運動靴を持参する。問い合わせは佐野さん(電話)090(6146)1067。