中国けん制の意図はない?
フィリピン軍は2024年5月8日、アメリカ軍、オーストラリア軍などと合同で行った大規模演習「バリカタン2024」の海上演習の締めくくりとして、ルソン島北部の南シナ海で中国製の退役タンカーを、対艦巡航ミサイルなどを使用し撃沈したと発表しました。
中国製タンカーを標的に対艦巡航ミサイルを初使用! 米豪軍との…の画像はこちら >>演習でSSM-700K「シースター」対艦ミサイルを発射するフィリピン海軍旗艦の「ホセ・リサール」(画像:フィリピン軍)。
この海上合同演習では、中国製のタンカー「レイク・カリラヤ」を標的艦とし、フィリピン海軍の旗艦であるホセ・リサール級フリゲート「ホセ・リサール」が20海里(約37km)の距離でSSM-700K「シースター」対艦巡航ミサイルを発射したほか、高速攻撃艇がスパイク中距離ミサイルによる攻撃を実施しました。なお、「ホセ・リサール」はフィリピン海軍史上初めて対艦巡航ミサイルを標的に発射した艦になるようです。
さらに、演習は空からも行われました。同国空軍のFA-50やアメリカ空軍のF-16、AC-130が対艦攻撃を実施し、オーストラリア空軍のE-7A「ウェッジテイル」早期警戒管制機が標的艦の位置情報などのデータを提供しました。海軍のマール・アル・アサフ中佐は記者団に対し、今回の演習の意味について「侵略者がフィリピンの地に上陸するのを阻止しようとする使命がある」と話したそうです。
標的艦となった「レイク・カリラヤ」は、元はフィリピン国営石油公社が所有していましたが、2014年にフィリピン海軍に寄贈されました。同タンカーは2020年にフィリピン海軍を退役し、当初は2023年に訓練の一環として沈められる予定でしたが、悪天候のため中止となり、今回の演習で使用されたとのことです。
南沙諸島問題などで、中国との対立が深まっているなかでの中国製の船を使用した演習ということで、中国外務省は、この件について質問を受けた際「いかなる軍事演習も第三者を標的としたり、第三者の利益を損なったりしてはならない」と警告。中国国営紙の環球時報は「同船がフィリピン唯一の『中国製海軍資産』である」とし、「不器用な政治的パフォーマンス」と指摘したようです。
なお、フィリピン国軍報道官のフランセル・マーガレス・パディラ大佐は、今回中国製の船が使用されたことに関して「これはまったくの偶然であり、船舶の出どころについては全く関係がない」と否定しています。