[マスクの下 こころとからだ 子どもたちの今](11) コロナ後遺症(上)
毎日のように続いた37度台の微熱がようやく落ち着いたのは、新型コロナウイルス感染から8カ月もたってからだ。
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■「心臓がばくばくする」
「心臓がばくばくする。運動した後みたい」。母親(42)は、長男の訴えを何度も聞いた。動悸(どうき)が気になって、夜眠れないようだった。
病院で診てもらっても、心臓の音に異常はない。感染判明から数日後には症状が落ち着き、隔離期間が終わると学校に戻った。
再び異変が襲ったのは、登校再開から20日後だ。
「微熱と動悸があって、本人が怖いと言っている」。学校からの連絡で迎えに行き、その足で近くの内科を受診した。尿検査、血液検査、心電図、エックス線、甲状腺の検査。どれも異常はないと言われた。
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この頃、ニュース番組がコロナ後遺症のことを伝えていた。「もしかして、うちの息子もそうなのかな」。学校に相談すると、県のコールセンターを紹介された。案内を受けた総合病院で再度検査を受けた。だが、ここでも異常はないと言われた。
■標準体重より16キロやせる
階段を上がると息が上がり、通学路の坂道さえきつそうだった。目はうつろ。学校の友達からは「よく来られたな」と驚かれた。大好きなゲームさえ、できなくなっていた。
「食欲がない。眠れない」。もともと身長170センチで体重52キロと痩せ形。それが食欲不振で47キロにまで減った。標準体重に16キロも足りない。持病はなく、学校に行くのを嫌がったこともなかった。
体の不調が続くとともに、高校2年生の長男の不安はますます高まった。
「家を出て信号渡ったけど、どきどきして行けない」。母親のラインには、頻繁にメッセージが入った。
入浴や就寝時も「このまま倒れたらどうしよう」と落ち着かない。脈を気にして、手首をずっと触る。仕事を休んで昼夜付き添う母親もまた、心身ともに限界に近かった。
■コロナ後遺症と診断
看護師をしている夫の妹に相談すると、こども医療センターを教えてくれた。病院で紹介状をもらい、昨年6月末に受診。症状から、コロナ後遺症と診断された。登校は、ドクターストップになった。診察では、心理的に強い負担がかかっていると指摘された。
「本人からしたら、言っていることはうそじゃない。家族も受け止めてください」
漢方薬と頻脈を抑える薬を飲みながら、心療内科を探すことになった。
■予約はどこも3カ月待ち
ところが予約はどこも3カ月待ち。「病院迷子でした」。子ども対象の心療内科の場合、15歳以下という条件に引っかかることも多かった。
自治体の紹介でどうにか予約が取れた遠方のクリニックで「不安と恐怖を伴ううつ状態」と診断された。「脈のどきどきが不安になって、思春期とかいろいろなことが重なったのかも」と、母親は考えている。
心療内科で合う薬が見つかってからは、先生が驚くくらい回復が早かった。学校に行けるようになったのは感染判明から4カ月後。出席日数が足りずに進級できない恐れがあり、最初は午前中、慣れてきた1週間後には午後も授業を受けた。
学校も配慮してくれた。体育は本人がきつければ休むことが認められ、移動教室は多少遅れても大目に見てくれている。
感染からまもなく10カ月。不眠と食欲不振はまだあるが、毎週だった通院は月に1度になっている。(「子どもたちの今」取材班・棚橋咲月)
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