外国人観光客「富士山を見られなくするなんて悲しい」「仕方ない」映えスポットに黒幕…町は「苦渋の決断」

山梨県富士河口湖町の「ローソン河口湖駅前店」の町道を挟んだ歩道で、富士山の眺望を見えなくするための黒幕が21日、取り付けられた。富士山がコンビニ店の屋根の上に乗っているような光景が写真に撮れるスポットとして2年ほど前から海外のSNSなどで話題になり、外国人観光客らが殺到。同町によると、主に「道路を横切る、飛び出すなどの危険行為」「私有地への立ち入り、無断駐車」「たばこのポイ捨て」の3点のマナー違反が続出し、地元住民から町に苦情が相次いでいた。
午前8時。業者がポールを立て、幅20メートル、高さ2・5メートルの巨大なビニールの黒幕を張り始めた。平日にもかかわらず付近は外国人で大混雑。ローソン横の交番から、警官が赤信号なのに横断する観光客に大声で注意していた。この日はあいにくの曇天で富士山は午後から拝めず。それでもローソンをバックに写真を撮る人は絶えなかった。
インドネシア人の20代男性は「富士山を見られなくするなんて悲しいね」としながら「周囲のみんなが迷惑しているなら、設置は正解かも」と理解を示した。30代台湾人女性は「ここは台湾でも有名なスポットで、黒幕の設置もニュースで知っていました。深刻な事情があるのだから、仕方ないかな」と苦笑した。
一方で、中国人の親子連れの40代女性は「他に似たような写真が撮れるローソンがあるので、そっちに行ってみます」。第2の「富士山ローソン」は、黒幕設置場所から徒歩15分にある富士河口湖町役場前店。この日も多くの人が訪れたが、駐車場が広大で写真も敷地内で撮れるため、駅前店ほどの混乱はなかった。
黒幕は、富士河口湖町が設置した。同町によると、昨年4月に道路に注意喚起のペイントを行い、同6月に警備員を配置。それでも状況は変わらなかったため「苦渋の決断で」(同町職員)設置に踏み切った。改善がなければ追加措置も検討しているという。
富士山周辺では外国人のオーバーツーリズム問題に悩まされている。富士河口湖町では、国外からの延べ宿泊者数が2022年10月は8290人だったが、23年3月には4万3627人に急増。同町は「町内は狭く、富士山ローソンのような美しい光景が見られるところに人が殺到してしまう。観光スポットを分散させて人の流れを作るのが今後の課題」と話していた。(樋口 智城)