2023年11月15日、同年10月に行われた第26回介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)の合格発表が行われました。厚生労働省によると、受験者数は5万6,494名、合格者数は1万1,844名で、合格率は21.0%でした。【2023年ケアマネ試験】合格率は21.0%に上昇! 最新出…の画像はこちら >>
なお、2023年度試験の合格率21.0%は、過去10年間で3番目に高い水準。第21回試験では過去最低の10.1%を記録しましたが、以降は回復傾向にあるといえます。
受験者数は4年連続で増えており、2019年度の4万1,049人から38%も増加。合格者数も前回より1,516人増加し、2年ぶりにプラスに転じました。
ケアマネ試験の合格率は、近年の制度変更によって大きな影響を受けてきました。
特に、2015年度から実施された国家資格保有者の一部科目免除廃止と、2018年度からの受験資格の厳格化が大きな転換点となっています。
2015年度以前は、一定の国家資格を保有している者に対して、試験科目の一部が免除されていました。この制度により、国家資格保有者は比較的容易にケアマネ試験に合格できる環境にありました。
しかし、2015年度からこの免除制度が廃止されたことで、国家資格保有者も全ての科目を受験しなければならなくなりました。この変更により、試験の難易度が上がり、合格率に影響を与えたと考えられます。
さらに、2018年度からは受験資格が厳格化されました。それ以前は、5年間介護業務の実務経験があれば受験資格を与えられましたが、改定によって実務経験として認定される業務範囲が狭まったほか、一定の国家資格を取得していることが前提となったため、受験者数は大きく減少したのです。
この時点から比較すると、近年は受験者数・合格者数・合格率おしなべて回復傾向にあるといえるでしょう。
第26回の試験では、合格基準点が介護支援分野17点、保健医療福祉サービス分野24点と設定され、正答率70%以上であることが求められました。
介護支援分野については近年頻出傾向の内容が多かったほか、比較的得点しやすい事例問題が3問出題されるなど、若干易化しているように見受けられました。
また、福祉サービスの知識等では定番のコミュニケーション技術、訪問介護・通所介護等の介護保険制度、成年後見制度といった内容が出題され、難易度は例年通りであったように思います。
その一方、保健医療サービスの知識等の分野に関しては、「指輪っかテスト」などのこれまでに見られないような選択肢に焦った方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、出題傾向はこれまで通り。他の選択肢をきちんと理解していれば得点できる内容でした。
なお、第26回ケアマネ試験の合格者の現在の職種別内訳を見てみると、介護福祉士が7,389人と最も多く、次いで看護師・准看護師が 1,925 人、社会福祉士が948人でした。
ケアマネと親和性の高い職種が目立ちますが、中でも介護福祉士の受験が顕著です。
ケアマネージャー試験合格者の職種別比率
この結果からみても分かるように、介護福祉士にとって、ケアマネージャーはキャリアアップの選択肢の一つとなっています。
身体介助を伴い夜勤もある介護職と比較すると、平日勤務が主流で、原則デスクワークであるケアマネは、年齢を重ねても長く続けられるポジションです。
さらに、「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によるとケアマネの平均月給は353,560円であり、介護福祉士の平均328,720円を上回っています。
介護福祉士として介護業界で経験を積んできた方にはピッタリの資格であるといえるでしょう。
介護支援専門員になるには、原則として試験に合格し、都道府県が実施する実務研修を修了する必要があります。
介護支援専門員試験は、介護支援分野(25問)と保健医療福祉サービス分野(35問)の2分野、全60問で構成されています。試験時間は120分間で、マークシート方式の五肢複択式となっています。
主な出題範囲は以下の通りです。
ケアマネ試験を受験するためには、前提条件として以下のうちのいずれかの資格を取得したうえで、5年以上かつ900日以上の実務経験が必要です。
ケアマネ試験の合格率は、近年20%前後で推移しており、他の福祉系国家試験と比べても低水準にあります。2022年度の第25回試験では合格率が19.0%、2023年度の第26回試験でも21.0%と、5人に1人程度しか合格できない狭き門となっています。
一方、同じ福祉系国家資格である社会福祉士の合格率は、2022年度で32.4%、精神保健福祉士に至っては65.8%と、ケアマネ試験の2~3倍以上の水準にあります。
ケアマネ試験の受験資格要件の厳しさや、幅広い知識が問われる試験範囲の広さが、この合格率の低さに影響していると考えられます。
実際、ケアマネ試験の受験者の多くは、介護や医療の現場で働きながらの学習を余儀なくされています。仕事と学業の両立という難しさに加え、限られた勉強時間の中で、介護保険制度やケアマネジメント、医療や福祉に関する幅広い知識を習得しなければなりません。
こうした状況の中で合格を勝ち取るには、効率的な学習方法と、本番での実力発揮が不可欠です。学習時間が限られる中で、いかに自分の苦手分野を克服し、頻出問題や重要ポイントを押さえられるかが鍵となります。
ケアマネ試験の勉強時間の目安は100~200時間程度とされていますが、現場経験や関連資格の有無によって個人差があります。合格者の多くは1年前から計画的に学習を進めています。
仕事と両立しながら学習を進めるには、まず、自分の苦手分野を正確に把握し、重点的に学習することが必要不可欠です。ケアマネ試験の範囲は広く、すべてを均等に学習するのは非効率的だからです。過去問や模擬試験の結果から、自分の弱点を特定し、集中的に時間を割くことで、効率よく知識を習得できるでしょう。
次に、テキストを音読することで、知識の定着を図ることも有効な方法です。単に目で読むだけでなく、声に出して読むことで、内容の理解が深まり、記憶に残りやすくなります。通勤時間や休憩時間を活用して、少しずつでも音読を習慣化することをおすすめします。
また、ケアマネ試験では比重が大きい事例問題の解き方をマスターしておくことが極めて重要です。単なる知識の暗記だけでなく、実際の事例に即した問題の考え方や、適切なアセスメント・プランニングの方法を身につける必要があります。事例問題集を繰り返し解き、解説を読み込むことで、問題への対応力を高めていきましょう。
ケアマネ試験の中でも特に配点の大きい分野が、介護保険制度とケアマネジメントです。法改正に伴う制度変更や報酬改定の動向を押さえたうえで、事例問題を通して知識の使い方を学んでおくことが重要です。
頻出問題の一つに、介護保険3施設である介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の特徴や人員配置基準に関する問題があります。それぞれの施設の役割や入所対象者、提供されるサービス内容、職員の配置基準などを理解し、関連する介護報酬についても知識を深める必要があるでしょう。
また、介護報酬の加算・減算に関する問題も頻出です。特に小規模多機能型居宅介護や認知症対応型共同生活介護などの地域密着型サービスや、リハビリテーションや看取り介護に関連する加算は、算定要件や単位数を正確に理解することが求められます。日頃から介護報酬の動向に注目し、改定内容を確認しておくことが大切です。
さらに、ケアマネジメントのプロセスや実践における留意点も頻出の問題です。アセスメントからモニタリングまでの一連の流れを押さえ、利用者の自立支援や尊厳の保持、多職種協働の視点を踏まえた事例問題に対応できるよう、実践的な知識を身につけましょう。ケアプラン作成における具体的な記載方法や、サービス担当者会議の開催時期、ケース記録の書き方なども抑えておくべきポイントです。
さらに、直近の傾向として、地域包括ケアシステムの構築や医療と介護の連携に関する問題も増えています。入退院時のケアマネジメントや看取り期の対応など、医療職との協働が求められる場面を想定し、連携のポイントを学んでおきましょう。
ケアマネ試験対策において、模擬試験や過去問題を活用した実戦的な問題演習は非常に重要です。中でも、直近5年分の過去問は出題傾向や問題の解き方を学ぶのに最適な教材といえるでしょう。最近では、アプリやWEBサービス等で気軽に取り組むことも可能であるため、自分に合った教材を探してみてください。
問題演習を行う際は、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
まず、本番試験と同じ制限時間を意識して問題を解くことが大切です。普段から本番同様の環境で問題演習をしておくことで、時間配分の感覚を身につけることができます。
次に、答え合わせをする際には正解・不正解を確認するだけではなく、解説をしっかりと読み、自分の知識の抜け漏れを補っていくことが重要です。
また、選択肢を選んだ根拠を言語化することで、知識の定着を図ることができます。最後に、間違えた問題については、再度解き直すことで弱点を克服していくことが求められます。
模擬試験は本番の緊張感を味わえるだけでなく、自分の強み・弱みを知る機会にもなります。本番で実力を発揮できるよう、計画的に模擬試験を受験しましょう。
高齢化社会の到来により、ケアマネージャーの役割はますます重要になっています。適切なケアプランを作成し、高齢者の自立した生活を支援する仕事は、やりがいがあり、待遇面でも魅力的です。ぜひしっかりと対策を立て、資格取得に向けて努力することをおすすめします。将来性のある仕事で、社会貢献にもつながるでしょう。