野村総合研究所は3月1日、「純金融資産保有額別の世帯数と資産規模」を各種統計などから推計し、発表。また、2022年11月には、現役起業家354名および起業家予備軍595名を対象に「NRIスタートアップ起業経験調査」を実施している。
預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から、不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に、総世帯を5つの階層に分類。各々の世帯数と資産保有額を推計した。
その結果、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」の世帯数は148.5万世帯(富裕層139.5万世帯、超富裕層9.0万世帯)にのぼり、2005年以降、最も多かった2019年の132.7万世帯からさらに15.8万世帯増加。
また、純金融資産保有額についても、富裕層が9.7%(236兆円から259兆円)、超富裕層が8.2%(97兆円から105兆円)と、計9.3%(333兆円から364兆円)増加。富裕層・超富裕層の世帯数および純金融資産保有額は、いずれも、安倍政権の経済政策(「アベノミクス」)が始まった2013年以降、一貫して増加を続けている。
その要因は、株式などの資産価格の上昇により、富裕層・超富裕層の保有資産額が増大したことに加え、金融資産を運用(投資)している準富裕層の一部が富裕層に、そして富裕層の一部が超富裕層に移行したためと考えられるという。
「日本の富裕層は事業オーナーである場合が多く、スタートアップの事業立ち上げおよび運営の支援を担う金融機関には、スタートアップが抱える悩みや課題を把握、理解することが求められている」と同社。
同社が、現役のスタートアップ経営者(以下「現役起業家1」)および将来のスタートアップ経営を目指す候補者(以下「起業家予備軍2」)を対象に実施した「NRIスタートアップ起業経験調査」によると、現役起業家は、金融機関をはじめとした多くの専門機関に事業立ち上げの相談を行った経験があり、中でも金融機関やVC(ベンチャーキャピタル)・CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を信頼していたことが明らかになった。
一方で、起業家予備軍の相談先は、弁護士・会計士・税理士や家族・知人であるケースが多いことがわかった。
次に、「起業前の事業立ち上げにおいて家族の理解が重要であったと思いますか?」と尋ねたところ、現役起業家の8割が「そう思う」と回答。また、過半数がその「家族の理解を十分に得られていた」としており、それは、起業・事業計画や将来のキャリアプランについて十分に対話したことが、家族の理解につながったという。一方、事業立ち上げに至っていない起業家予備軍は、その大切な家族の理解が必ずしも十分でないケースがあるという。
起業家予備軍が事業の構想・検討から実際の起業のハードルを乗り越えるには、「家族とのコミュニケーション・理解の醸成が大きな推進要素である」と同社。家族と対話するにあたっては、専門的な支援の担い手として現役起業家から高い評価を得ている金融機関からの情報提供やアドバイスが大きな助けになるとしている。