航空会社職員へのカスハラ、JAL・ANA「もう許しませんよ」 ”貴重なご意見”と何が違う? 2社で新ルール設定

「前はやってもらえた!特別対応しろ!」もう通用しませんよ?
「詫び状書かせろよ!」「答えになってねーよ、バカ、無能だな、お前」「頭いかれています」「不快な思いをさせた本人か責任者に他社便のターミナルまで来させろ。お願いではなく命令だ」――これは、JAL(日本航空)、ANA(全日空)の運航に関わるスタッフに浴びせられた、乗客からの暴言です。こういった「カスハラ(カスタマーハラスメント)」に2社は今後、どのように対応するのでしょうか。
航空会社職員へのカスハラ、JAL・ANA「もう許しませんよ」…の画像はこちら >>JALとANAの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。
2社は共同で「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定。「カスハラ」の基本方針、定義、該当行為などを発表しています。2社では昨年度、それぞれ300件程度のカスハラ事案が発生したとのこと。ANAの担当者によると「スタッフの体感としては増えているという声も聞かれる」とも話します。こういった行為は対応するスタッフだけではなく、カスハラ客の周囲にいる別の利用者に不快な思いを抱かせることにも繋がります。また、カスハラに対し明確な基準がなかったことで、判断に迷うことがあったともしています。
2社は「お客様のご意見・ご指摘には真摯かつ誠実に対応していまいります」としながらも、「著しい迷惑行為などに対しては、人権および就業環境を害するものとして、毅然と行動し、組織的に対応する」としています。「注意喚起に従ってもらえない場合、管理職も入り複数人で対応していく予定です。そこからさらにカスハラが発展した場合、警察への相談も含め対応していく予定です」(ANAの担当者)
そして2社は、カスハラの定義を以下のように規定します。
・顧客または取引先などを含む第三者からの優越的な立場を利用した「航空法、その他関連する法規に反する行為」、及び「これらにつながりかねない行為」、または「義務のないことや社会通念上相当な範囲を超える対応を要求する行為」により、社員の就業環境が害されること
これまで2社は航空法をはじめとする関連法規に反する行為には、今までも毅然とした対応を行ってきたものの、「義務のないことや社会通念上相当な範囲を超える対応を要求する行為」に対しては法的な後ろ盾がないことから対応に苦慮していたとのことです。
そして、カスタマーハラスメントに該当する行為例について、2社は次のように定めます。
●暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷など例:大声、言葉遣いが荒い話し方、「バカ野郎」などの発言、「〇〇(特定の性別を指して)のくせに」「男性の上司を出せ」などの性差別的な発言、容姿を揶揄する発言、能力を否定する侮辱的な発言
●脅威を感じさせる言動例:「殴ってやる」「殺すぞ」「SNS で拡散させる」などの脅迫的な発言、反社会的な勢力などをほのめかす発言
●過剰な要求例:規定やルールを超えた多額の補償金やアップグレードなどの特別対応の要求、「家まで謝りに来い」「土下座しろ」などの実現不可能な要求、係員の態度が気に入らないなど理不尽な理由での慰謝料などの金銭の要求
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JALとANA「カスハラ」共同会見の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
●暴行
●業務に支障を及ぼす行為例:居座り、長時間の電話など、正当な理由がない社員の長時間拘束、話のすり替え、揚げ足取りや執拗な攻め立てによる社員の長時間拘束、(複数の場所での)同じクレームの繰り返しによる著しい業務妨害、不合理な問い合わせの複数回繰り返し、常習的な同じクレームの繰り返し
●業務スペースへの立ち入り
●社員を欺く行為例:不正に発券された搭乗券の利用、年齢や氏名を詐称した搭乗、空席確保のための重複予約行為、お手伝いが必要な内容の虚偽申告、社員への対応の強要
●会社・社員の信用を棄損させる行為例:・事実に反する会社や社員への誹謗中傷の SNS への投稿、予約センター・機内・空港などでの対応状況の録音・録画データの SNS への投稿、事実ではないことや、事実を誇張した虚偽を含んだ内容の流布・インターネット上での掲載
●セクシャルハラスメント (盗撮、わいせつ行為、発言、つきまといなど)