物価高騰の中、牛乳の値上がりも家計に重くのしかかっていますが、その背景にあるのが、乳牛の餌の価格上昇です。
こうした中、新潟県新発田市では、酪農家と稲作農家が協力し、餌の地産地消に向け、動き出しています。
【杉本一機キャスター】
「ウシたちの食事の時間です。食欲旺盛に餌を食べていますが、この餌の値上がりが酪農経営に打撃を与えています」
【尾田牧場 尾田拓志さん】
Q.どれくらい餌を食べる?
「(1頭あたり)1日に25kg以上は食べる」
新発田市豊浦地区で約70頭の乳牛を飼育する尾田拓志さんの牧場では、去年の餌代が4500万円ほどに上り、以前と比べ、5割近く上がりました。
乳牛の餌は多くを輸入に頼っていて、ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響を大きく受けています。
【尾田牧場 尾田拓志さん】
「私たち生産者で、11月から牛乳を10円近く上げたが、それでも追いつかない」
経営維持のため、安定した価格で餌を入荷することが急務となる中、尾田さんが手を組んだのが、同じ豊浦地区の稲作農家です。
【アシスト二十一 木村清隆さん】
「もともと昨年はコメを栽培していた。今年度はトウモロコシを栽培する」
農業法人の代表・木村清隆さんは、主に主食用のコメを作っていますが、酪農家の尾田さんの要望を受け、去年から田んぼの一部を乳牛の餌になるトウモロコシの畑に転換しています。
その背景には、稲作農家の悩みもありました。
【アシスト二十一 木村清隆さん】
「農業者の高齢化が進んでいて、田んぼの集積が進んでいる。それを同じコメ作りだけになると、忙しい期間が限られている中で、多い面積を作業しなきゃいけないのは、かなり負担になってくる」
こうした中、互いに助け合おうと、尾田さんや木村さんなど、地域で酪農や稲作を営む5つの団体が去年、新たな組織「新発田コントラクター」を発足。
この新組織を中心に、農家側はトウモロコシや飼料用の稲を生産。酪農側はそれを牛の餌に利用する一方、牛のふん尿を堆肥にして農家側に供給します。
酪農側は安定した価格で餌を確保できるほか、費用をかけて処分していたふん尿を有効活用できる一方、農家側は化学肥料に代わる堆肥を安価で入手できるほか、主食用米からの転換により、収穫など時期が集中していた作業の分散を図ることができます。
試験的に生産した餌を牛に与えたところ、乳量の向上が見られるなど、手応えを感じているという新たな取り組み。
【尾田牧場 尾田拓志さん】
「酪農家が餌高で廃業になってしまえば、誰も牛乳が作れない。協力して、良い餌を確保して、ずっと続けていけるようにやっていきたい」
【アシスト二十一 木村清隆さん】
「次世代に残せるスタイルを確立できれば、農業者全体の若返りも図れるでしょうし、永続的に農業を残していきたい」
厳しい環境に負けない持続可能な農業へ生産者たちが知恵を絞っています。