「この国だけ、時が止まってる」 女性議員が増えない日本 格差是正を阻む『根強い声』とは?

2023年3月8日は『国際女性デー』です。
男女ともにジェンダーの平等について考える機会を創出するべく、日本でもさまざまなイベントや啓発活動が行われました。
日本最大の社会貢献財団『公益財団法人日本財団(以下、日本財団)』は、Twitter上で世界の女性議員比率を示した表を投稿。
1945~1948年と比較し、どれだけ女性の議員が増えたのか、各国で比べてみたところ…。
うわぁ、日本だけ、時が止まってる…#国際女性デー pic.twitter.com/2UOHGt3wJs
日本は、1946年から女性議員の比率がほぼ変わらない!
表を見ると、2021年、欧米諸国では3割弱~5割弱。韓国でも2割弱まで女性の議員が増えているにもかかわらず、日本はいまだ1割に満たない状況です。
第二次世界大戦後に日本で初めて女性議員が誕生してから80年弱。女性の社会進出が進んだといわれる現代においても、政策を検討する現場に女性は増えていません。
さらに日本財団は、国政、地方政治におけるジェンダー・ギャップについて深掘りした投稿もしました。
2022年の #ジェンダー・ギャップ 指数「政治」の順位は139位(146か国中)と、ワースト水準でした調査したところ、特に立候補する女性の少なさが目立ちます。この状況を女性の問題として消化するのではなく、社会構造を一つ一つ紐解きながら、社会全体で考えていく必要があります。#国際女性デー
私たちの暮らしに最も身近な #地方政治 実は国政よりも大きな #ジェンダー・ギャップ が存在しています女性の市区町村長は全体の1.9%。また市区町村議会の17.1%にあたる298の議会では、女性議員が一人もいません♂多様な意見が反映されにくい状況が、地方政治に存在しています#国際女性デー
世界経済フォーラムが公表している、各国における男女格差を測る『ジェンダー・ギャップ指数』の順位で、日本は139位。各国と比べても政治分野で特に低いといわれています。
国会において女性議員の数が、全体の2割に満たないだけでなく、地方政治においては女性が1人もいない市区町村の議会も多いようです。
女性の立候補者が少ないといった現状もあり、投稿では「男女比率の差を生む社会構造を一つひとつ議論をしていかなくてはいけない」と問題提起をしています。
Twitter上では日本財団の投稿に対し「女性が少なくて何が問題なのか」「議員になりたい女性が少ないだけの話」「性別よりも実力重視で選ぶべき」といった声が数多く寄せられていました。
このように、日本では女性の議員を意識的に増やすことについて、疑問を抱く人が少なくありません。
そこで、この問題について少し掘り下げて考えてみたいと思います。
そもそも、なぜ政治において男女のバランスに配慮をする必要があるのでしょうか。
女性は日本の人口のおよそ半数を占めるのに対し、議会の構成員は男性に偏っています。社会における男女比率と比較して、女性議員の比率が極端に少ない問題は『過少代表性』の問題とも呼ばれています。
※写真はイメージ
さまざまな人が暮らす日本の社会。誰もが生きやすい社会にするために、議員も多様な人々で構成されることで、より民主的な議論の場が担保されると考えられています。
「女性の数を増やす=多様性が担保される」という簡単な話ではありませんが、議員の構成が男性に偏ることで、議論の場の同質性が高まる危険性があります。これを変えていくために、まずは第一歩として女性議員の数を増やすことが大事なのでしょう。
また、政治の世界において女性の参画が進むことで、子育てや教育に関連する問題、働き方改革や男女の賃金格差解消に向けた取り組みなど、女性が直面している、さまざまな課題について、政策を検討する機会が増えることも期待されています。
女性の政治参加を拡大する取り組みとして、有効とされているのが、格差是正のために、マイノリティに一定数の割り当てを行う制度『クオータ制』です。
1978年にノルウェーで制定された男女平等法から始まった『クオータ制』は、世界各地の政治やビジネスの現場での導入が進んでおり、議会においては、女性議員の割合が一定になるよう法律に基づく仕組みを作る国が増えています。
たとえばフランスでは、「男女の公認候補者は同数でなければならない」とする『パリテ法』を制定し、選出される議員の男女平等を推進しています。
また韓国では、法律で比例代表候補者名簿の半数を女性にすることを義務付けたことで、女性議員比率が2021年時点で2割弱まで増加をしました。
そのほか、女性議員が安心して働ける環境を整備するため、選挙期間中や議会におけるハラスメント行為に対し罰則を設ける国も多くあります。
※写真はイメージ
『クオータ制』については、ルールを設けて女性を意図的に増やすことについて「能力のある男性の席を奪うことにつながる」「男性への『逆差別』だ」といった声も根強くあり、日本では法整備までにいたっていません。
女性の政治への参画を積極的に行い、環境を変えていくことは、『逆差別の発生』や『制度運用面での負担』といった痛みも生じるかもしれません。これについては、十分な議論や現場の試行錯誤が求められています。
議員比率のアンバランスさは性別に限らず、年代などさまざまな側面においてもいえることです。
多種多様な人々の声を政治の現場に届けていくためにも、まずは、仕組みの部分から改善していく必要があるのかもしれません。
[文・構成/grape編集部]