実験機の大破から1年 下地島空港を拠点の宇宙旅行計画 2027年にも試験飛行へ 沖縄・宮古島

[リポート’24 宮古島発]
宮古島市の下地島空港を拠点に航空機による宇宙旅行の実現を目指す「下地島宇宙港事業」で、昨年6月28日に無人飛行実験機「PDAS-X06」(6号機)が海に落ちて大破してから1年が経過した。航空機を開発するPDエアロスペース(名古屋市、緒川修治代表)はいったん同空港から引き揚げ、原因の分析を進めながら次の無人機7号機の開発に着手。2027年にも試験飛行を始め、その後の有人機の開発につなげていくが、25年にも宇宙旅行開始という当初の目標から遅れが生じている。(宮古支局・當山学)
同事業は県が同空港と周辺の県有地を民間事業者が活用する第2期事業として、20年9月に同社と合意した。高度100キロまで飛び、約5分間、無重力の宇宙空間を体験できるものとして、25年に100人、30年に千人の利用者を送り出す目標を掲げていた。
同空港敷地内の格納庫で開発していた6号機は全長4・9メートル、重さ400キロ、到達高度8キロ。滑走路での地上試験を繰り返していた。
昨年6月の初の飛行試験では離陸から2分後、機体と地上操縦機器との通信が途絶えた。自動操縦モードに切り替わり、試験空域外に近づいたため自動でエンジンを停止させ、着水時の衝撃で機体が大破した。後の同社の分析で、追跡装置が機体の軌道に追いつかなかったことなどが原因だと判明した。
少しずつ遅れていた計画は、さらに足止めを食らった。
■「成果」を強調
同7月、国土交通省は機体の損壊が大規模だったとして無操縦者航空機では初めての「航空事故」に認定した。一方、チーフエンジニアも務める緒川代表は「失敗でも事故でもない」と強調する。
実験機のため海に落ちることを想定し、事前に地元の漁業協同組合の了解を得ていた。
1度だけの試験飛行ながら、緒川代表は「機体性能は設計通りのパフォーマンスを発揮し、自動操縦を含め安全停止装置まで完璧に機能させることができた」との見解を発表した。「いろいろなことが分かり、成果はあった」とし、到達高度80キロの7号機の開発に必要な最低限の技術取得ができたとしている。
■国内に4カ所
現在、国内では宇宙航空研究開発機構(JAXA)以外に4カ所で「宇宙港」に取り組んでいる。
下地島空港は3千メートルの滑走路を生かして水平に離陸する「水平型」だ。大分県国東市の大分空港も水平型、和歌山県串本町の南紀白浜空港はロケットを発射する「垂直型」。約40年前から航空宇宙産業の誘致を進めていた北海道大樹町は両方に対応し、21年に北海道スペースポート(HOSPO)を本格稼働させた。
一方、大分では打ち上げを予定していた米国企業が昨年に破綻。和歌山では今年3月、小型ロケットの打ち上げに失敗するなど、それぞれが課題と向き合っている。
「それぞれの土地の特徴を生かして切磋琢磨(せっさたくま)している」と緒川代表。今後に向けて「難しいことは当たり前。全力を尽くして頑張る」と話した。実験機の大破から1年 下地島空港を拠点の宇宙旅行計画 202…の画像はこちら >>