明石市・泉市長「耐えているのは家計ばかり…政治家も“やりくり”すべき」

《日本の『国民負担率』は“47.5%”……にもかかわらず、子育て支援も介護負担の軽減も一向に進まない。私たちのお金は、一体どこに消えているのだろう。江戸時代よりひどい時代に、私たちは生きているのかもしれない……》
兵庫県明石市の泉房穂市長(59)が自身のツイッターでこうつぶやいたのは2月22日のこと。この前日に財務省が発表した’22年度の「国民負担率」が「47.5%」だったことを受けての怒りのツイートだった。
国民負担率とは、国民の所得に占める税金や社会保険料の割合で、公的負担の大きさを国際的に比較する指標。統計が始まった’70年度には25%未満だったが、’13年度に40%を超え、今日まで上がり続けているのが日本の国民負担率だ。子ども医療費をはじめ「5つの無料化」を実施するなど「市民のための市政」が全国区で注目される泉市長はこの事態を前にこう話す。
「私たち世代の幼少時に比べれば、国民負担率は2倍以上です。問題なのは、日本がここ30年ほぼ経済成長しておらず、国民生活はどんどん苦しくなっていること。介護保険料はまだまだ引き上げられるでしょうし、消費税も現行の10%から、さらに上がる流れです。『国民5割負担』では済まない時代が来てしまうことが心配です」
’90年代以降、日本のGDP(国内総生産)は横ばいだが、国民が納める額は2倍以上に増えている。この背景を、泉市長は「縦割り行政」をキーワードにこう語る。

「消費税を上げたい財務省と、保険料などを上げたい厚生労働省が、連携なく国民に負担を課し続けていることが元凶です。それを是正すべき政治家が、派閥や権力者の顔色をうかがって機能不全に。国民から徴収したお金が政治家や取り巻き、既得権益に回っているのに、テレビ・新聞が正確に伝えないのも大問題です」
岸田文雄首相は今国会の冒頭で「異次元の少子化対策」に言及し、「子育て予算倍増」を宣言した。だが「倍増」基準の公開を野党に求められると「まず政策の中身を整理する」と、具体的な施策については言及しなかった。
「政府は、国民から預かっているお金を、国民のために使う。市長は、市民から預かっているお金を、市民のために使う。それが、本来あるべきシステムです。しかし、政府は国民を虐げ、自分たちやその取り巻きに忖度し、便宜を図っているのです」
2月28日には厚生労働省が’22年の出生数を、過去最少の79万9千728人だったと発表。統計開始以来初めて80万人を割るという未曽有の少子化について、岸田首相は「危機的状況だと認識している」とは語ったものの、いまなお具体策を明言していない。
一方、泉市長は’11年に明石市長に就任以降、特に子育て支援に力を入れた政策を実行してきた。18歳までの医療費や、第2子以降の保育料など「5つの無料化」をはたしている。
するとそれまで減少傾向にあった市の人口が増加に転じ、赤字続きだった税収の黒字化にも成功したのだ。その成功の秘訣は? と問えば、「時代状況に応じて“やりくり”してきた結果です」と胸を張る。

「給料が上がらないのに教育費や授業料が上がれば、保護者は子どものために“やりくり”しますよね。お父ちゃんがスナック通いを減らしたり、お母ちゃんがブランドもののコートを我慢したり……。なぜ一般の家計だけが耐えることを強いられて、政治家たちはそれをしないのか。いままでどおり政治家が既得権益のほうを向いている限り、国民イジメは止まらないんです」
泉市長はこの4月末の任期満了で退任する意向。しかし彼のような人物こそ国の重要ポストに就いてほしいものだが……。
「いまは市民のためのラストスパート。最後まで走り切ります」
そう誓う泉市長は、私たち国民にもできることはある、とメッセージをくれた。
「明石市でできることは、全国どの街でもできる。国だってできる。そのために、みなさんが『いま、何が起きているのか』を正しく知っておくことが大切なんです。苦しい現状を放置したままではいけません。読者投稿やSNSでもいい。一人ひとりが声を上げることで、世の中を変えていきましょう」