あんは21歳。私の年齢からすると、むしろ、あんのお母さんの気持ちの方が気になってしまう。なぜ娘に売春をさせ、理不尽に殴り、覚醒剤使用を許容するのか。なぜ娘を「ママ」と呼ぶのか。
彼女に確固たる信念や道理がないことは一目瞭然。「生きる」という苦しい時間を、死なないから続けているかのような日々。時々襲いかかる不安と悲しみは怒りとなり、その矛先が娘のあんに向かう。奇跡的な出会いを通し、自らの人生を取り戻そうとするあんを見て何を感じたのだろう。輝き始めた娘の人生を、必死で暗闇へ引き戻そうとする母親の根底にあるものが、彼女だけのものではない気がしてくる。
映画は、これが実話だと告げてから始まる。「あん」とその母の物語が、現実に生きる多くの女性たちの物語なのだと思えてくる。
(桜坂劇場・下地久美子)
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