世界17か国の空軍が一堂に会して訓練を実施する「ピッチ・ブラック2024」演習。今回、日本のF-2戦闘機が参加し、地元住民や観光客の前でデモフライトを実施しました。現地住民の目には空自の戦闘機はどう映ったのでしょうか。
オーストラリア北部の都市ダーウィンにあるミンディルビーチにて2024年7月19日、航空自衛隊のF-2戦闘機がエアショーフライトを行いました。
F-2戦闘機は日米共同開発の戦闘機で、三菱重工業が開発・生産し、現在は福岡県の築城基地と茨城県の百里基地、宮城県の松島基地、この3か所に配備されています(少数が岐阜と浜松にもあり)。
なぜ、航空自衛隊の戦闘機が遠く離れたオーストラリアの地でエアショーを行っているのでしょうか。
実は、これらF-2戦闘機は、2024年7月現在、オーストラリアで行われている多国間共同演習「ピッチ・ブラック2024」に参加している機体です。
あれは「ミツビシ!」空自のF-2戦闘機がオーストラリアの空舞…の画像はこちら >>オーストラリアのダーウィン基地に展開した航空自衛隊のF-2戦闘機(画像:航空自衛隊)。
この演習は、オーストラリアのノーザンテリトリー(北部準州)で7月12日から8月2日まで開催されます。参加国は日本を始め17か国にも及び、参加する航空機は約100機、人員は2500人にもなる大規模なものです。
航空自衛隊は、2年前に開催された前回の「ピッチ・ブラック2022」にも4機のF-2戦闘機を参加させましたが、今回はそれよりも規模が大きくなり、築城基地所属のF-2戦闘機6機のほかに、今回新たに浜松基地所属のE-767早期警戒管制機(AWACS)が1機加わっています。
演習期間中は、参加する航空機の多くがダーウィン市内にあるオーストラリア空軍のダーウィン基地を拠点にし、早朝から戦闘機の発着が繰り返し行われます。このため、軍事演習ではあるものの、その概要はオーストラリア空軍によって積極的に公開されており、今回のエアショーも一般向けのPRを兼ねたイベントとして実施されたものになります。
現在のオーストラリアは観光シーズンで、エアショーが行われたミンディルビーチも100以上の屋台が並ぶサンセットマーケットが同時に開催されており、浜辺などには観光客や地元民など約1万人の人々が集まっていました。
そんな多くの人々を前にして、日本のF-2はどのように飛んだのでしょうか。飛行自体は2機編隊で会場のビーチ上空を旋回するだけのシンプルなものでしたが、会場に設営された地元ラジオ局の生放送ブースでは、軽快なナレーションでF-2の存在をアピールしていました。
「空を見て、あれはF-15? F-16? これは日本のF-2だ!」。やや芝居がかったかけ声に続いて、ナレーターは生産する三菱の社名についても解説していきます。
「トヨタ、ホンダ、スズキは好きですか? これ(戦闘機)は驚いたことに三菱なのです!」
非常にフランクなナレーションでしたが、海外でも知名度の高い日本車のメーカーに掛けて、F-2が三菱ブランドで作られていることに触れていました。
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ダーウィンのミンディルビーチで、夕日をバックに観衆の前で飛ぶF-2戦闘機(布留川 司撮影)。
実は車メーカーである三菱自動車と、戦闘機などを作る三菱重工は同じ三菱グループでも別企業であり、このナレーションは厳密には事実と異なっています。しかし、オーストラリアには2008年3月まで三菱自動車の工場があり、そこで現地生産をしていました。そのため、オーストラリア人にとっては馴染み深い名称だったといえるでしょう。
なお、会場には地上から同僚の飛行を見学するために、航空自衛隊のパイロットやその隊員たちも来ていました。また、彼らが着る日の丸を付けた飛行服は目立ったのか、来場した一般人から記念撮影なども求められていました。
F-2の海外エアショー参加は、広報活動という意味では一定の成果を収めたようです。