共働き・片働き、同じ世帯年収1,000万円ならどっちがお得なの?

「年収1,000万円」と聞くと、高収入でうらやましい、目標にしたいという人が多いのではないでしょうか。しかし、片働きで年収1,000万円と共働きで年収500万円ずつでは、同じ年収1,000万円でも手取り額が大きく異なります。

では、片働きの年収1,000万円と共働きの年収1,000万円では、どちらがどのくらい得なのでしょうか。片働きと共働き、それぞれの手取り額を計算したシミュレーション結果をご紹介します。

■片働きと共働き、給与から何がいくら引かれる?

年収1,000万円は裕福なイメージですが、残念ながら、その金額が丸々手元に入るわけではありません。それは、給与から以下のような社会保険料や税金が引かれているためです。

・厚生年金保険料
・健康保険料
・介護保険料(40歳以上)
・雇用保険料

・所得税
・住民税

これらの社会保険料や税金は、収入や家族構成などによって金額が異なります。そのため、片働きと共働きでは、同じ年収1,000万円でも手取り額に差があるのです。

では、片働きと共働きでは給与から何がどのくらい引かれ、手取り額はいくらになるのか具体的にシミュレーションしてみましょう。いずれも、ボーナスは考慮せず、東京都在住の40歳未満(介護保険料の負担なし)という条件です。

<片働きで年収1,000万円>

まずは、世帯主が年収1,000万円を稼ぎ、その配偶者は家事に専念し扶養に入っているケースです。

・社会保険料…約123万円
・所得税・住民税…約138万円
・手取り額…約739万円

社会保険料や税金が引かれ、手取り額は約739万円という結果になりました。
<共働きで年収1,000万円>

次に、夫と妻がそれぞれ年収500万円ずつ稼いでおり、世帯年収が1,000万円のケースを見てみましょう。

・社会保険料…約71万円×2=約142万円
・所得税・住民税…約38万円×2=約76万円
・手取り額…約391万円×2=約782万円

社会保険料や税金が引かれ、手取り額は約782万円という結果です。

片働きと共働きのケースを比較すると、年収は同じ1,000万円でも、手取り額には年間43万円もの差がありました。稼ぐ金額は変わらないのに、片働きと共働きでここまで大きな差が生じる理由とは、何なのでしょうか。
■共働きのほうが手取りが多くなる理由とは

同じ年収でも片働きと共働きで手取り額が違うのは、税金の仕組みに理由があります。所得税は、所得が増えるほど課される税率も高くなる「累進課税」で計算されています。

所得税の税率は最低税率5%~最高税率45%と段階的に設定されており、先ほど行った手取り額のシミュレーションでは、片働きで年収1,000万円の場合は税率20%、共働きでそれぞれ500万円ずつ稼ぐ場合は税率10%が適用されます。

また、給与から差し引く「給与所得控除」は、年収850万円超からは一律の金額となります。これも、片働きで年収1,000万円の所得税が高くなる要因の一つです。

社会保険料については、標準報酬月額65万円以上は厚生年金保険料が一律であることから、共働きのほうが多くなりますが、それでも、片働きの所得税は圧倒的に大きな金額であり、結果的には手取り額に大きな差が生まれました。

所得税の累進課税が大きく影響することから、同じ年収1,000万円でも、片働きで年収1,000万円より、共働きで500万円ずつ稼いだほうが手取り額が多くなることがほとんどなのです。
■「手元に残るお金」を意識しよう

片働きで年収1,000万円を達成している人は一握りですが、「共働きで年収500万円ずつ、世帯年収1,000万円」なら実現性がグッと増すうえ、手取り額を多くすることもできます。

どのような働き方を選択するかは家庭によってさまざまですが、共働きと片働きで迷ったら、手取り額の差も考慮して検討することをおすすめします。

一方、片働きの場合は特に、ふるさと納税やiDeCoなどの節税制度を活用し、少しでも手元にお金を残すことを意識してみましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら