[社説]敦賀原発不適合 リスクを直視し廃炉に

東京電力福島第1原発事故の後、原子力規制委員会が発足して初めての不適合判断である。日本原子力発電は結果を重く受け止め、廃炉を決断すべきだ。
原電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)について規制委は、「原子炉直下に活断層がある可能性は否定できない」として原発の新規制基準に適合しないと結論付けた。
敦賀原発直下の断層を巡っては、2013年と15年の2度にわたり規制委の調査団が活断層と指摘していた。
しかし、原電は「活断層ではない証拠が得られた」として規制委に審査を申請。審査では原子炉の北約300メートルにある断層の活動性と、原子炉直下を通る周辺断層との連続性が焦点となった。
原電はいずれも活動性と連続性はないと主張したものの、規制委は「明確な根拠により否定できていない」として退けたのだ。
東日本大震災時の原発事故を受け13年にできた新基準は、活断層の上に重要施設を設置することを禁じている。
活断層の定義は「13万~12万年前以降の活動が否定できないもの」と旧基準を踏襲した一方、明確に判断できない場合は最大40万年前までさかのぼって評価するよう新たに求めている。
地震の影響は甚大だ。福島第1原発事故の経験からも、原電側が「活断層ではない」と立証できない以上、不適合とするのは妥当な判断と言える。
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原電は、大手電力などの出資により設立された。原発の電気を電力会社に売って収益を得ている原発専業の会社だ。
だが、日本初の商用原発である敦賀原発1号機は15年に廃炉が決定した。東海第2原発(茨城県)も周辺自治体の反対が根強く、再稼働の見通しが立たない状況だ。
保有する原発が軒並み稼働できておらず、福島原発事故以降、原電は全く発電していない。
原発の維持費は、出資する東電など5社からの「基本料金」で充てている。同社の23年度決算の売上高は前期比4・9%増の967億円余りで、そのうち基本料金が9割を占める。
政府は各電力会社に対し、こうした基本料金を電気料金に上乗せすることを認めている。
2号機が不適合となったことを受け、原電側は追加調査の意向を示しているが、国民の負担を考えれば、これ以上議論を長引かせるべきではない。
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原発の審査は長期化している。
敦賀原発の審査には10年余りを要したほか、今年1月の能登半島地震で被災した北陸電力志賀原発や、南海トラフ巨大地震で巨大津波が襲来する恐れのある中部電力浜岡原発などの審査も結論が出る見通しは立っていない。
岸田文雄首相は気候危機対策として原発推進に舵(かじ)を切ったが、果たして原発は持続可能なエネルギーとなり得るのか。原電の存続危機を機に、原発依存も見直すべきだ。