「ディズニークルーズ」果たしてお値段は…? 「40万人がクルーズ船に乗る」時代がくる? 想定プランを聞いた

日本の船舶業界を驚かせた、オリエンタルランドによる「ディズニークルーズ」の日本展開。クルーズの活性化につながると期待も寄せられています。同社はどのようなプランで、どのような価格帯を考えているのでしょうか。
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが2024年7月9日に発表したクルーズ事業への新規参入は、多くの業界関係者に驚きの声を持って迎えられました。
「ディズニークルーズ」果たしてお値段は…? 「40万人がクル…の画像はこちら >>7月9日に行われたディズニークルーズ日本展開の記者発表会にて(画像:オリエンタルランド)。
ディズニークルーズが日本に進出することも大きなニュースですが、日本船籍で14万総トン級のクルーズ船は過去に例がありません。そのため運航時のオペレーションや発着地となるターミナル、修繕を行うヤード、燃料として使用するLNG(液化天然ガス)のバンカリング体制などに注目が集まりました。
オリエンタルランドは1隻目の運営状況などを踏まえ、将来的に複数隻で運航することも想定しており、ディズニーという抜群の知名度を背景に、日本のクルーズ人口が大きく拡大することも期待されています。
「これまでのテーマパーク事業やホテル事業で培ってきた運営ノウハウや、ディズニー社との強固な信頼関係という強みが活かせると考えた」--同社はクルーズ事業に参入することを決めた背景をこう説明します。
新造船の建造を担うのはドイツの造船所マイヤー・ベルフト(Meyer Werft)で、2022年に就航した米ディズニー・クルーズライン初のLNG燃料クルーズ船「ディズニー・ウィッシュ(Disney Wish)」(14万4256総トン)がベースとなります。客室数は1250室、乗客定員は4000人で、乗組員数は1500人です。
日本での就航は2028年度の就航を予定しています。投資額は船の建造費を中心に約3300億円となっています。
同船の規模は、日本郵船グループの郵船クルーズが2025年夏に就航を予定するLNG燃料クルーズ船「飛鳥III」(5万2200総トン、乗客定員約740人)や商船三井グループの商船三井クルーズが2隻の整備を計画している新造クルーズ船(3万5000総トン級、乗客定員約600人)を遥かに上回っており、ディズニーの新造船は日本船籍で最大のクルーズ船となることが決定的です。
クルーズへの参入に当たって14万総トン超となる「ディズニー・ウィッシュ」級を採用した理由についてオリエンタルランドは「需要や収益性の観点から総合的に検討して最大規模となる船を選んだ」と説明します。
同社は、日本国内のクルーズ人口が年々増加傾向にあることから、さらなる成長が見込まれると予想。ファミリーや若年層をターゲットとしたクルーズとして、ディズニークルーズ特有の魅力を活かし、日本のクルーズ市場を開拓する余地が十分にあると判断しました。
船のスペックは「ディズニー・ウィッシュ」と同等ではあるものの、「船内の一部施設の内容やデザイン、食事の内容、エンターテイメントの内容は既存のディズニークルーズとは異なる点が出てくる予定」(オリエンタルランド)だといいます。
すでに竣工している「ディズニー・ウィッシュ」の船上にはマーベル作品や「アナと雪の女王」などをテーマにしたダイニング、ディズニーミュージカルの上演を行う劇場、さらにはウォーターコースターのようなアトラクションまで設けられています。現時点で詳細は未定であるものの「日本ならではのオリジナルな内容も盛り込みたいと考えている」としています。
就航する航路は首都圏を発着する2-4泊程度の周遊クルーズがメイン。プランについてオリエンタルランドは次のように話します。
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オリエンタルランドが日本導入を発表したディズニークルーズのイメージ(画像:オリエンタルランド)。
「クルーズ代金は、一部の体験や飲食代を除き、キャラクターとの没入感あふれる体験、ラグジュアリーなダイニングからカジュアルダイニングまでの幅広いラインナップの食事やプール、レクリエーションなどを含んだオールインクルーシブを想定している。最も多い客室タイプで1人1航海あたり10-30万円台の幅広い価格帯を用意する方向で検討中だ」
また、周遊クルーズだけでなく、「国内外の港も含むバリエーションに富んだ航路も検討」しているといいます。
ディズニークルーズは1998年に竣工した「ディズニー・マジック」(8万3338総トン)でスタートし、北米・カリブ海エリアや地中海エリアを中心に運航してきました。
現在は5隻の船隊で構成されていますが、「ディズニー・ウィッシュ」級として2024年12月に「ディズニー・トレジャー」が、2025年には「ディズニー・ディスティニー」が加わる予定です。2隻はいずれもマイヤー・ベルフトで建造が行われており、オリエンタルランドが日本向けのクルーズ船を同社に発注した理由の一つとなっています。
また、シンガポールを拠点としたクルーズに2025年から投入を予定しているメタノール燃料クルーズ船「ディズニー・アドベンチャー」(20万8000総トン)も建造が進められています。
オリエンタルランドは国内発着のディズニークルーズについて「就航から数年後には、年間乗客数は約40万人、年間売上高は約1000億円を見込んでいる」と事業の見通しを説明。ディズニー・エンタプライゼズとの契約期間は、最長で就航から39年間延長可能で、売上高に応じてロイヤルティーを支払うことになります。既存のディズニーリゾートとの連携については「クルーズの前後にパークやディズニーホテルをお楽しみいただくことも可能とは考えている」と話していました。