[社説]オスプレイ墜落報告書 安全への疑念解消せず

昨年11月、鹿児島県の屋久島沖で米空軍の輸送機CV22オスプレイが墜落した事故について、米空軍が調査報告書を公表した。
オスプレイは左右にエンジンとギアボックス、ローターを備える。
墜落原因は、そのうち左側のギアの破損によりエンジンの動力がローターに伝わらなくなりバランスを失ったためと結論付けた。
事故機は演習のため岩国基地(山口県)を離陸し、嘉手納基地に向けて飛行していた。
離陸から約40分後、左側のギアボックス内部で金属片が発生したことを示す警告灯がついた。その後この警告灯は5回表示されたという。事故後、ボックス内のギアが破断していることが判明した。
ギアボックスについては、これまでも内部で金属片が発生する不具合が相次いできた。しかしその原因はいまだ不明である。金属片の発生とギアの破断にどのような因果関係があるのか。報告書では破断の原因を突き止められなかったとした。
不具合を示す警報が複数回出ていたのに操縦士が飛行を続けた判断にも疑問が残る。
離陸から71分後にはボックス内の金属片を燃焼し切れなかったことを知らせる警告灯が表示。マニュアルではその場合「可能な限り速やかに着陸する」とされていたが、操縦士は警告灯の故障と思い込んだ。
結果として警告灯は計7回も点灯したが、操縦士は屋久島空港への着陸を要求した際も自らは「緊急事態」を伝えていない。なぜなのか。
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機体の異常と人的要因。今回の調査報告書では、それらが連鎖して墜落したとした。
しかし、いずれの根本原因も特定できていないのである。一方、米軍は今年3月「対策を講じて安全に運用できるめどが立った」として事故後見合わせていた飛行を再開した。
再発防止策としてギアボックスの整備頻度を増やし、警報が3回出る前に着陸するようマニュアルを改定したという。
それで十分なのか。米軍は運用再開後も緊急着陸などの対応が可能な飛行場から30分以内の範囲に飛行を制限している。根本原因が判明しないままの飛行再開は、あまりに危険だ。
米下院の委員会は先月、こうした運用に疑義を呈し、全ての墜落事故に関する資料を提出しなければ国防長官を召喚すると通達した。米軍は議会の通達を重く見るべきだ。
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この間、事故調査に対する日本政府の主体性は全く見えない。
運用再開に当たり県や自治体への説明でも、米軍が遺族から訴訟を起こされる懸念などを理由に詳細を明かさなかった。それどころか、どれだけの情報を把握しているのかも伝えなかったのである。
墜落事故は日本の領空・領海内で起きた。政府は、根本的な対策が講じられるまで運用を認めるべきではない。