館山市の郷土料理「ごんじゅう」の作り方を、地域住民や子どもたちに教えてきた。6月には、自身が監修したごんじゅうが期間限定で販売され、スーパーで売り切れるほどの人気商品に。「ここまで反響が大きいとは思わず、びっくりしちゃった」と頬を緩める。
ごんじゅうは、1センチ角に刻んだ豚バラ肉、油揚げ、かつお節と調味料(砂糖、しょうゆ、酒、水)を鍋に入れて煮込み、白米と混ぜておにぎりにしたもの。名前の由来は「両手の5本指を使って握るから、5と5でごんじゅう」。毎年9月に行われる安房地域最大の祭礼「やわたんまち」で、同市高井地区の名物として、みこしを担ぐ若者らに振る舞われてきた。
40年ほど前、同地区の盆踊り大会の準備中に「昼食で食べるから、具材を味付けして」と求められ、ごんじゅうの存在を知った。その後「やわたんまち」の際に自宅に訪れる若者に振る舞ったところ、好評に。以来、「おらがごっつお(わが家のごちそう)」として、祭りの際には欠かさず握り続けてきた。
昨年7月、米を使った郷土料理を商品化する事業を始めたコメの卸会社「ミツハシ」(横浜市)が、市の保健推進員だった頃に作成されたごんじゅうのレシピを市ホームページから見つけ、協力を依頼された。家庭の味を機械で再現しなければならず難航したが、20回以上の試作を重ね完成。関東一円のスーパーや地元の道の駅などで限定販売されると人気となり、テレビや新聞などのメディアに取り上げられた。
「30年ほど会えなかった友人が電話をくれた。それが一番うれしかった」と思わぬ効果も。野菜栽培などで忙しく、出先でごんじゅうを作る活動はしないつもりだが、「郷土料理が広まれば」との思いに変わりはない。「小学生や育ち盛りの子のおやつにもおすすめ。本当に簡単だから、家庭でも作ってみて」